179人が関係と言われても残るモヤモヤ……自民党が統一教会問題を絶対解決できない核心部分
どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ──1932(昭和7)年にレコード化されて大きな反響を呼んだ軍歌「討匪行(とうひこう)」の有名な一節だ。今の自民党が直面している状況に、これほどぴったりな表現はないだろう。
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自民党は9月8日、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を「点検」した結果を発表した。
自民党所属の国会議員379人のうち179人に統一教会との関係があったというものだった。割合にして47・2%になる。
TwitterなどSNSでは《随分多いな》と驚く声も少なくなかったが、《実数はもっと多いと思われる》などと調査の信用性を疑う投稿がかなりの数にのぼった。
統一教会との“癒着”が次々に報道され、岸田内閣の支持率は下がり続けている。自民党が早期の幕引きを図っているのは言うまでもなく、「179人」の発表で「最善を尽くしました」とアピールしたいはずだ。
だが、自民党が“スピード解決”を目指しているのとは対照的に、有権者は「調査は不充分。自民党は徹底的に膿を出しきるべきだ」と望んでいる。
なぜ、この差が埋まらないのかは後で詳述したい。まず触れておきたいのは、「点検」の発表に至るプロセスでさえ紆余曲折があり、有権者の「岸田内閣や自民党の対応は後手後手に回っている」という不満の原因になっているということだ。
そもそも茂木敏充幹事長(66)は、8月2日の記者会見で統一教会との関係について、「党内で調査した結果、これまで一切の関係を持っていないことが確認できた」と説明した。これで有権者を一蹴できると思っていたのだろう。
甘い調査内容
もし本当に《関係を持っていないことが確認できた》のなら、「点検」をする必要はない。
だが「点検」は8月26日から始まった。党所属の国会議員に対し、統一教会との関係についてアンケートを実施したのだ。
これはどう考えても2回目の調査だ。8月2日の調査では不充分だと分かり、26日から「再調査」が始まったということだろう。
だが岸田文雄首相(65)は、8月31日の記者会見で「点検」と表現。同じ日に茂木幹事長も記者会見で「調査ではありません。各議員に点検を要請している」と発言し、有権者の失笑を買った。
おまけに「9月6日にも公表する」との見通しを明らかにしていたのだが、9月2日になって「延期する」と発表した。「報告に曖昧な記述があった」という説明がなされたとはいえ、右往左往している印象を有権者に与えてしまった。
こうした経緯から、有権者は自民党の“本気度”を疑っていた。そのため「点検」の結果を発表しても、疑いの眼差しは変わらなかった。担当記者が言う。
「自民党は、会合への祝電・メッセージなどの送付、会合への出席や選挙におけるボランティア支援など8項目について回答を求め、その結果を発表しました。しかし、当初から『重要な質問項目が抜けている』など、甘い調査だと指摘されていたのです」
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