【初恋の悪魔】残り3話 見えてきた雪松鳴人署長のリバーシブル

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動機は復讐

 雪松の子供は死んだ3人の遺体の特徴と同じことをされたのではないか。靴がない、濡れていた……。雪松の子供が悪質極まりないイジメに遭ったことを想起させる。

 では3人はなぜ法の裁きを受けなかったのか。その答えは第5話で出ていた。

 鈴之介宅の以前の持ち主・椿静枝(山口果林)は旧境川中学校の外壁崩壊により、最愛の娘と孫を亡くした。ところが、誰も罰を受けなかった。世間には罰せられない悪が無数にある。殺された3人も同じ。悪さをした時に少年だったからかも知れない。

 静江の場合、娘と孫を失った恨みから、リバーシブルの内側だった面が出現し、市役所の担当者を地下室に監禁した。おそらく第5話は雪松による不連続殺人を観る側に伝えたヒントなのだろう。「善良な人も愛する人を失うことによって違う面が出てくる」。そう伝えたかったのではないか。

 静枝は鈴之介と知り合ったことにより、以前の人格に戻った。リバーシブルの面がひっくり返された。雪松にはそういう出会いがなかったのだろう。

 警察は第1、第2の殺人の関連を見過ごした。そのうえ第1の事件の犯人とされたホームレス・矢澤栄太郎(三島ゆたか)は身に覚えのない物的証拠を突き付けられた。第2の事件の犯人・淡野リサ(満島ひかり)も同じだ。

 なぜ、捜査は誤った方向に進んだのか。また、どうして証拠がそろえられたのか。警察内に犯人がいたからとしか考えられない。第6話の終盤でヘビ女面の星砂が「誰かに嵌められた」と言ったが、雪松なら可能である。

 雪松なら警察がどんな人物を疑うのかも分かっている。ホームレスや前歴者を色眼鏡で見る現実を知っている。いわゆる裏側の人間と呼ばれる人たちを警察は真っ先に疑う。

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