韓国人がウォンを売り始めた 政府が「通貨危機は来ない」と言うも信用されず
「通貨の自動安定装置」は機能せず
中央日報は社説「商品収支が10年ぶりに赤字、複合危機に直面する韓国経済」(9月8日、韓国語版)で、赤字に転落した商品収支を急落するウォン相場と絡め危機感を煽りました。
・昨日[9月7日]、取引時間中に外為市場でウォンの対ドル相場は1388・40ウォンまで下落した。昨年1月の1080ウォンに比べ、28%も安くなったのだ。
・昨日発表の「2022年7月の国際収支(暫定)」によると、輸出と輸入の差である商品収支が昨年同月よりも67億3000万ドルも減って11億8000万ドルの赤字となった。
為替と、商品収支なり貿易収支との関係は重要です。これまでなら何かの拍子にウォン安に陥っても、それをテコに輸出が増えて貿易収支が好転、その結果ウォンが買われる――という通貨安の自動的な補正が期待できた。
しかし今は、他通貨もドルに対し一斉に下がっており、輸出増によるウォン安修正は見込めないのです。下手すればウォン安が韓国に対する信任を落とし、さらなるウォン安を呼びかねません。これはまさに、通貨危機の最後の段階です。
なお、9月7日は前日比12・50ウォン安い1ドル=1384・20ウォンで引けました。終値基準では2009年3月30日の1391・50ウォン以来の安値水準を記録したのです。9月8日は韓国のお盆である、秋夕(9日―12日)の休日入りを前に少し戻しましたが。
短期外債が急増
――基本的な質問です。日本を含め、多くの国も通貨安に陥っている。なぜ韓国だけが通貨危機を心配するのでしょうか。
鈴置:外国からの借り入れにまだ、頼る部分があるからです。韓国は債権国に転じてはいますが、日本のように巨大な対外債権を持っているわけではない。世界で金融不安が起きると、韓国からおカネが逃げ出す可能性があります。
そんな不安を率直に告白したのが朝鮮日報の社説「ウォン急落の中、短期外債急増、『安全ベルトをしっかり締めろ』という警告だ」(9月6日、韓国語版)でした。肝心な部分を訳します。
・1年以下の満期の短期外債の外貨準備高に対する比率が10年ぶりに再び40%を超えた。これを軽く見てはいけない。国内の一般投資家が海外の株式・債券の投資を増やしており、これらにドルの実弾を供給するために国内の銀行が短期の海外借り入れを積み上げたのだ。
・もちろん我が国の場合、外貨準備高が4000億ドルを超え、対外負債よりも対外資産の方が多いため、通貨危機を心配する状況ではない。しかし、ウォン急落は物価を押し上げ弱者階層の生活難を加重する一方、外国人投資の流出を招いて金融不安を誘発しうるという点で経済の「危機警報」と見るのが正しい。
金融が不安定になれば、短期の外債は借り換えに応じてもらえず、おカネを一斉に返す羽目に陥りがち。下手すれば外貨準備が不足して、債務不履行(デフォルト)が発生します。そこで1年未満の外債と外貨準備高との比率を、国の健全性を示す指標として使います。
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