女性刑務所は「前歯のない人が多い」 元受刑者が語る殺人犯と並んで浴びた「15秒シャワー」

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あんたどうせションベン刑なんでしょ

 半年に一回行われる部屋替えや職場での交流も重ね、次第に周囲と会話を交わすようになった万年さん。やはり一番気が合うのは、同じ罪状で入った仲間たちだった。

「女性刑務所で圧倒的に多いのはポン中(覚醒剤中毒者のこと)です。前歯がないような人もゴロゴロいます。ポン中同士が集まって話題になるのは決まって“ネタ”の話。『私はこんな売人使っていた』、『あの時のネタは最高だった』なんて口々に盛り上がっていると、やめたいと思っていた人だって、また手を出したくなるものです」

 逆に一番とっつきにくかったのが重罪で収監されている受刑者たちだった。万年さんは刑期の後半で再びルール違反を犯して懲罰を受けた時に、運動場で二人の殺人犯と一緒になった時の会話が忘れられない。

「彼女たちはVIPと呼ばれ、普段は単独房にいて一般受刑者とは関わらない受刑者でした。二人で『ここのエサはまずいから違う刑務所行きたいわ』なんて盛り上がっているのです。で、私に向かって『あんたはどうせションベン刑なんでしょ』。一人は舎房の中で競馬新聞を読んでいて、面会に来る人に頼んでギャンブルしていると話していました。『去年は1000万円くらい稼いだかなぁ』って。罪の重さと向き合い反省しているようには見えないのです」

出所後に万引きをして戻ってくる老人

 そんな豪胆なタイプとは逆に精神を病んでしまう受刑者もいた。

「違う工場なんですが、殺人で12年の刑を打たれた女性でした。医務で会うと、『センセイ、私、死刑になるんですか』ってブツブツ聞いているんです。センセイも苛立って、『アンタ、死刑にならなかったからここに来たんでしょうが』って。あと万引きする人には摂食障害の人が多い。人の食べ物を盗んだり、あまった残飯をおにぎりにしたり……。ひどい人は、食べたものをトイレの中に全部吐いてしまう。これは禁止行為。バレたら水道の使用を制限されたりして、部屋の全員にも迷惑が及ぶとあって厄介でした」

 受刑者の年齢層もバラバラ。20代が3割くらいで30代から50代が3割くらいで残りは老人たちだという。老人たちの中には出所したばかりだというのに「やっぱシャバで食っていけねぇ」って帰ってくる人も。

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