依願退職の「警視庁マル暴刑事」 組織がひた隠しにする、もっと重要な捜査情報の漏洩問題
刑事が逮捕されたケース
この関係者が続ける。
「このときも警視庁は金銭の授受などの見返りはなかったと結論付けたんですが、この刑事については、本部勤務の時から『夜な夜な暴力団と飲み歩いている』など危なっかしい噂がつきまとっており監察部門も目を光らせていた。暴力団から酒席で接待を受けながら“見返りはなかった”では国民は納得しないでしょう。他にも、暴力団に女をあてがわれた現場を写真週刊誌にすっぱ抜かれた刑事もいましたが、そちらは懲戒処分すら受けていないはずです」
さらに警視庁では、女性警察官が交際相手の暴力団組員に捜査情報を漏らし、地方公務員法違反で書類送検された後、依願退職になるなど、確かに暴力団絡みの不祥事は「曖昧な決着」が通り相場のようだ。
一方、過去には、同じような情報漏洩をめぐる不祥事で、刑事が逮捕されるに至ったケースもある。
2013年、警視庁本部勤務だった刑事が捜査資料を暴力団に渡したとして、逮捕・起訴され、その後、懲戒免職となっている。この刑事は当時、組織犯罪対策4課内で暴力団の内情を探る「視察連絡」と呼ばれる係に属しており、普段から暴力団組員と飲食を共にするなど関係を深めていた。
殺人未遂事件に関する捜査資料を
しかし、暴力団組員から情報を得ることを重ねるうちに逆に取り込まれるようになり、あろうことか求められるままに殺人未遂事件に関する捜査資料を提供してしまったという。その後、別の事件の捜査に関連してこの組員の自宅に踏み込んだ警察官が、偶然にも「そこにあってはいけない、あるべきではない資料」を見つけた。資料の「ネタ元」として浮上したこの刑事はあえなく“お縄”となったのである。
前述の警視庁関係者は、「あのときはブツが出たからごまかし切れなかったんでしょう。もっとも、逮捕された刑事は放免後も暴力団関係者と一緒にいるところを目撃されており、反社会的勢力との関係を省みる気もなかったのでしょう。警察組織にとっては、すっぱり縁を切ることができてむしろ良かったんじゃないですか」と話す。
暴力団排除がうたわれて久しい昨今、警察官が一般人以上に襟を正すべきなのは言うまでもない。にもかかわらず、なぜこうも捜査当局に暴力団絡みの不祥事が多いのか。
[2/3ページ]