「リブゴルフ」出場リストから日本人選手が消えたナゾ PGAツアーが「圧力」は本当か

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PGAツアーの元メンバーに対する態度

 ただし、それとは別に、返信レターではこのタイミングで新たに決められた事柄も通達されていた。

 それに触れる前に、PGAツアーが自らのもとを去りリブゴルフに出場した「元メンバー」の選手に対して、どのような措置を取ってきたか振り返りたい。

 PGAツアーは、これまでも現在も「元メンバー」だった選手に対しては、きわめて強気で確固たる態度を示している。リブゴルフ第1戦に参加したPGAツアーのメンバー選手17名に対しては、彼らが初日の第1打を打つやいなや、即座に資格停止処分を科した。

 17名のうちの10名はPGAツアーのメンバーシップを自主返上したため、もはや彼らがPGAツアーの大会に出場することは二度とない。残りの7名は、その後、さらなる4名とともに、資格停止処分の取り下げを求め、反トラスト法違反でPGAツアーを提訴しているが、原告組11名からは1人抜け、また1人抜け、今では7名まで減っている。

 その原告組の中の3名は、プレーオフ・シリーズ第1戦への出場許可を求めて仮処分を申請したが、8月の審問でその訴えは全面的に却下され、2024年1月の「本チャン」裁判の戦況も厳しいという見方が米メディアの間では広がりつつある。

 いずれにしても、そんな法廷の泥沼戦争の真っ只中にいる彼らは、裁判が結審するまではPGAツアーの大会に出場することはまずない。そして、判決内容によってはその道は完全に絶たれる。リブゴルフに参加するからにはそうなる可能性も「最初からわかっていた」ことではある。

 そんなふうにPGAツアーに背を向けてリブゴルフへ移っていった「元メンバー」に対しては、PGAツアーは厳然たる態度を見せているが、PGAツアーのメンバーではない「ノン・メンバー」に対しては優しさも見せている。

 だからこそ、PGAツアーからJGTOへ送られてきたレターには、JGTOからの提案・打診への返答として「今後(今年の9月以降)リブゴルフに参加しなければ、2023年のソニー・オープンとZOZOチャンピオンシップに出場できる」という寛大な打開策が記されてきたのだ。

 JGTOによれば、これは「2023年以降のPGAツアーが主催する大会、共催大会等に、資格さえ満たせば、出場する権利を有すると理解して良い」とのこと。日本ツアーの選手たちに対するPGAツアーの最大限の「譲歩」「温情」であり、PGAツアーが「圧力をかけてきた」などと批判するのはお門違いだ。

この事態を招いたのは誰か?

 リブゴルフに参加したら、PGAツアーのメンバーかどうかに関わらず、その後のPGAツアーや共催大会、下部ツアーなどへの出場を禁じられることになるという話を、今ごろになって「知らなかった」「初めて聞いた」と選手が言うのであれば、それは情報収集不足、注意不足としか言いようがない。

 もしも「そんな話、聞かされてなかった」「教えてくれなかった」「サポートしてくれなかった」などとJGTOを恨むとしたら、それは「とんでもない」お門違いだ。

 そもそもJGTOのサポートでリブゴルフに出たわけでもない。自分で決めてリブゴルフに行っておきながら、何かあったらJGTOに責任を求めるのは筋違いということだ。個人事業主の権利を主張するプロゴルファーは、それと引き換えに「自己責任」が付いて回ることを忘れてはならない。

 それでもなお「誰かのせいだ」と思いたいのであれば、その相手はJGTOでもPGAツアーでもなく、リブゴルフではないだろうか。ビッグな賞金、豪華な舞台、楽しい演出など、目に見えるものばかりをアピールし、世界中から選手たちを呼び寄せた一方で、目に見えない将来のリスクに関する事前説明は、ほとんどされていなかったのだろう。

 そして、確証もないうちから、「メジャーにも出られる」「世界ランキングの対象になる」「PGAツアーを訴えれば勝てる」と言って選手を誘い込んだリブゴルフは、よりビッグなスター選手の参加が決まると、下位選手や無名選手の姿をあっさり消してしまう。何かコトが起こっても「それは災難でしたね。PGAツアーはけしからん」と形式的に言うだけだ。

 今回の日本人選手たちのZOZOチャンピオンシップ出場可否に関しても、リブゴルフは「PGAツアーはいつまで選手たちのリブゴルフ参加を邪魔するのだろうか?」とツイートしただけで、選手たちへのフォローアップやヘルプは何一つ見せず、おそらく今後も見せないだろう。

 私たちの目に見えた変化は、意気揚々とリブゴルフに参加した日本人選手4名の名前が、突然、リブゴルフの出場者リストから消え、さらに彼らがZOZOチャンピオンシップに出場できないことが今さらながらに確認されたということ。一方でPGAツアーは、そんな彼らに対して「ノン・メンバー」だからこその温情をかけ、救いの手を差し伸べたということ。

 それがコトの真相である。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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