ダルビッシュ有、WBC辞退なら「ケジメ」必要 3000奪三振の“生けるレジェンド”が待望論に苦悩するワケ
23年で引退なら、WBCに出場しても支障ないが……
8月上旬、ダルビッシュは本拠地サンディエゴで栗山監督の訪問を受けた。「遠いアメリカまで足を運んでいただいて感謝しかありません」とツイッターに記した。
しかし、代表入りが確定したかのような見出しでNHKが記事化したところ、「一部を切って見出しにするのは本当にやめてほしい。何も決まっていません」とツイッターで“待った”をかけた。
NHKはすぐさま記事を修正。その後もダルビッシュは「まだ出発点。考え始めたところ」などと慎重な姿勢を崩さなかった。MLB記者が心情を察する。
「WBCはメジャー開幕直前の3月に開催される。特にピッチャーは、ここにピークを持っていけば公式戦に悪影響が出る。これまでもWBCに出場した日本人投手が公式戦で精彩を欠くことが多々あった。得られるのは名誉で、出場要請を断れば“非国民”扱い……。ダルビッシュが報道に神経質になるのは理解できる」
だが、ここである「矛盾」が頭をもたげる。
ダルビッシュは19年シーズン前に、一部スポーツ紙上で「人生、そんなに長くない」と、6年の現契約が切れる23年限りでの現役引退に言及している。現役続行の可能性は「95%ない」とした。
来季で引退となると、前出の元NPB球団監督の「来季がラストなら、WBCの公式戦への悪影響を過度に気にする必要はない。日本のため、野球人生を懸けてWBCに臨めるのでは」との指摘は的を射ていることになる。
ゴジラ、マー君らの先例
今年5月、ダルビッシュは引退について「まだ確定していません」と態度を保留した。WBC参戦を躊躇する理由を「来年(8月に)37歳。162試合を控えて2月中旬にぼんぼん投げないといけない。野手と違って投手は肩肘にすごく負担がかかる。大きなけがになったら年齢的にもマイナー契約しかない可能性も高い」と説明する言葉は、24年以降も現役を続けると完全に翻意したようにも聞こえる。
「衰えが感じられない今の状態をキープすれば200勝は射程圏内で、24年シーズン中の達成が現実的。3年以上が経ったのだから、心変わりもするだろう」(元NPB監督)
昨オフ、シャーザー(メッツ)は37歳で3年契約と、年齢的に長期間ではなかった代わりに、年平均に換算すると史上最高年俸4333万ドル(約148億円、当時のレート)を手にした。ダルビッシュもFAとなる来オフは、シャーザーのような形の契約を狙える。そのためには来季の活躍が大前提で、来春のキャンプは極めて重要な意味を持つ。
かつて松井秀喜も田中将大(楽天)もヤンキースでのシーズンを優先し、WBC辞退に至った。
「先例もあるから、ダルビッシュは辞退しても負い目を感じることはない。ただ、24年以降も現役を続けるなら、どう気持ちが変わったのか、最低限ファンに説明する責任はあるのではないか。その上でFA前の大事なシーズンだから、キャンプで調整に専念するためWBCは辞退したい、と。メディアに苦言を呈してまで自分の真意を伝えることを重んじ、自らSNSで発信してきたダルビッシュだからこそ、ケジメは求めたい」(在米ジャーナリスト)
変わることは怖くない。
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