「フットボールクラブで“お姉ちゃん役”だった」 渋谷母娘刺傷、15歳少女の素顔

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「死刑になりたかった」「母親を殺すための予行演習」「塾に行きたくなかった」。変遷する供述の、どれが“本心”なのか。渋谷区円山町の路上で母娘が包丁で刺され重傷を負った事件。犯行直前・直後の動画には、逮捕された15歳少女の「強烈な殺意」が写されていた。

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 赤色のサッカーのユニフォームを身にまとい、少し首をかしげて白い歯を見せて笑う少女A。切れ長の目に真っすぐな鼻筋、整った顔立ちと言っていいだろう。通っていた地元フットボールクラブの夏合宿に参加した彼女を捉えた映像からは、見知らぬ人をいきなり包丁で刺すような「昏(くら)さ」は微塵も感じられない。

 しかしそれから約3年が経過し、15歳になった彼女は、胸の内に明確な殺意を忍ばせていた。埼玉県戸田市にある自宅を出たのは、8月20日正午過ぎ。後の本人の供述によれば、一旦は塾に向かったものの、途中でJR武蔵浦和駅に移動して電車に乗り、「今日、人を殺す」と心に決めた。リュックの中には100円ショップで購入した包丁など刃物3本が入っていた。

 終点の新宿駅に着いたのは午後2時頃。犯行時刻は7時20分頃だから約5時間の「空白」がある。その間、ずっと街中をさまよっていたのかは定かではないが、「人を殺しやすそうな路地」を物色していたという。

大股になって距離を詰め…

 犯行の直前、そしてまさに取り押さえられる彼女の様子を捉えた動画が手元にある。

 犯行現場は京王井の頭線神泉駅近く、渋谷区円山町の路上だ。その手前、道沿いにある駐車場の防犯カメラの動画にまず映るのは、1本のビニール傘をさして肩を並べて歩く女性二人である。その二人、53歳の母親と19歳の娘は渋谷に遊びに来た帰りで、神泉駅から電車に乗って杉並区の自宅に向かおうとしていた。

 一面識もない母娘の日常を切り裂くことになる少女Aは白いパーカー、ショートパンツに黒いスパッツ姿。二人の背後にピタリとつけ、徐々に大股になって距離を詰めていく。映像の中の彼女は、リュックを背負っていない。

「リュックは事件後、現場から数十~100メートル離れたところで見つかっています。そこにリュックを置いて包丁を取り出し、身軽になって犯行に及んだのでしょう」(捜査関係者)

 母娘に近づく彼女は左手だけが前後に動いている。全く動かない右手には包丁が握られていたのだろう。

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