車検なし、ヘルメットなしの「電動トゥクトゥク」とは? 隠れた使い道も

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 東京・新宿のヨドバシカメラ本店の地下フロアを訪ねると、不思議な形の乗り物が置いてある。

 正面から見ると屋根付きのバイク。だが、横に回ると3人が座れる仕様なのがわかる。後ろ姿は、昭和中期にはやったオート三輪のようでもある。

「これは、EVトゥクトゥクと言いまして、最近になってぼちぼち売れているんですよ」(店員)

 値段は税込77万円。高いのか安いのかわからない価格だが、東南アジアで走り回っているトゥクトゥクを、そのまま電動化したと思えばいい。ただし、外観は現地のものほど派手ではない。聞けば、充電は家庭用の100V電源に対応し、航続距離は約80キロ。運転には普通免許が必要だが、車検がいらず、車庫証明も不要。そしてヘルメット着用の義務もないという。

 主な使われ方は、やはりビジネスで、ホテルや高齢者施設での送迎、リゾート地ではガイド役が客の案内に使うこともある。最近では屋根に看板を載せて選挙カーとしても使われた。たしかに細い路地にも入っていけるし、ちょっとしたスペースに停めておける。電気代しか掛からないのでお財布にも優しそうである。

EVならではの利点

 このEVトゥクトゥクを企画・販売する「ビークルファン」(東京・江戸川区)の松原達郎代表取締役に聞いてみた。

「もともと当社は電動キックボードを扱っていまして、EVトゥクトゥクを日本で販売してみようと考えたのは4~5年ほど前のことです。ご存じのように日本で3人以上の人を乗せる乗り物といえば自動車くらいしかありませんでしたが、ちょっと近くまで人を乗せて行きたいというニーズはあるはず。そこで法律(道路運送車両法)を調べると『側車付軽二輪』という区分があることがわかった。一般にはサイドカー付きの二輪車がこれにあたりますが、トゥクトゥクも同じ分類なのです。中国のEV工場に製造を依頼し、当社がファブレス(工場を持たない)メーカーとして日本で売り出すことにしたというわけです」

 売り方も少し変わっていて、冒頭で紹介したように量販店などを通じ、バッテリー付きの「走る家電」として販売している。EVならではの利点もあると松原氏。

「当社のEVトゥクトゥクは搭載のバッテリーから電気を取り出すこともできて、日産リーフのように災害時の非常用電源としても役に立ちます」

 これまでの販売台数は約600台。テスラにははるか及ばないが、使い勝手は悪くない。

週刊新潮 2022年9月1日号掲載

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