ミドリムシの会社からSDGs実現のための会社へ――出雲 充(ユーグレナ代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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定款を変える

出雲 上場企業の私どもには、12万人を超す株主がいます。これほど大勢の株主がいるベンチャーはまずありません。一般に株主というと、少しでも高い配当を望み、儲かっているかどうか気にする人たちだと考えますが、弊社の株主は違います。ほとんどの人が、地球環境のために頑張っているこの会社を応援したくて株主になっているんです。

佐藤 だからこそ採算度外視のバイオ燃料開発ができたわけですね。

出雲 証券会社や銀行など金融業界のプロからすると、それがまだ信じられない。「ユーグレナは株主からのクレームの嵐でしょ」とか「バイオジェット燃料の開発なんかやめて、サプリで儲かったら配当するのが株式会社の常識だし、上場会社の責任」と言われます。私はそれがあまりに嫌だったので、昨年、会社の定款を変えたんですよ。

佐藤 どのようにされたのですか。

出雲 普通は「自分たちは〇〇事業で儲けて株主還元をします」とあるところ、「当会社は、持続可能な社会の実現を目指して、次の事業及びこれに附帯する一切の事業を営むことを目的とする」として、SDGsの17の目標を並べたのです。つまりSDGsを達成する会社だと定義した。

佐藤 それは会社というより、協同組合的な組織ですね。

出雲 定款の変更は特別決議事項なので、株主の3分の2以上の賛成が必要です。だから、できるわけがないと言われましたが、90%以上の株主が賛成してくれました。

佐藤 ミドリムシの会社から「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」の会社になると発言されていましたが、それを定款で明確にされた。

出雲 その通りです。

佐藤 では今後、それをどんな形で実現させていきますか。

出雲 ユーグレナの持つ豊富な栄養素でバングラデシュの子供たちの栄養問題を解決することと、「サステオ」でどんどん飛行機を飛ばし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することは、どんなに大変でもやり続けます。その上で、起業家たちと性善説のコミュニティーを作っていきたい。具体的にはそれを応援する仕事やファンドですね。また、このユーグレナ社はグループ会社の仲間を合わせると、現在約800人いますが、その800人それぞれがユーグレナ社のアセット(資産)を活用して、サステナビリティーを実現していくよう、会社をそのステーションにしていきたいですね。

出雲 充(いずもみつる) ユーグレナ代表取締役社長
1980年広島県生まれ。東京大学農学部卒。2002年東京三菱銀行入行。05年ユーグレナを創業し、世界初の微細藻ミドリムシの食用屋外大量培養に成功する。世界経済フォーラム・ヤンググローバルリーダー、第1回日本ベンチャー大賞・内閣総理大臣賞受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』『サステナブルビジネス』。

週刊新潮 2022年9月1日号掲載

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