ミドリムシの会社からSDGs実現のための会社へ――出雲 充(ユーグレナ代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】
2030年SDGsの実現
佐藤 性善説か性悪説かという議論は昔からあります。キリスト教は性悪説で組み立てられていますが、それをイエス・キリストによって転換させていく構造になっている。人類の未来を考えれば、やはり性善説に立って、少しずつ改善していくのがいい。それには出雲さんのような性善説の人がいて、周りの人をどんどん感化していくことが重要になってきます。
出雲 私は1980年生まれですが、私と同じくらいか、それより若いベンチャーの起業家は、日本でもアメリカでもみんな同じような考えを持っています。「社会問題を解決する」ことが一番大事で、格好いいと思っている。だから初対面でも、よりよい社会、よりよい未来のために頑張っているとわかると、ベンチャー同士、協力できる時は一緒にやろうと意気投合します。こうした流れは加速しています。
佐藤 すでに価値観の近い人の集まりができている。
出雲 SDGsの17のゴールと169のターゲットが2030年に実現できると思っている人は、少ないかもしれません。ただ、私は絶対に達成できると思います。ユーグレナ由来の油脂を原料の一つにしてSAFを作るなんて、誰も信じていませんでした。でもテクノロジーが進んで実現した。同じことがさまざまな分野で起きているんですよ。
佐藤 同じ価値観の人が集まると、そこからまたケミストリー(化学反応)が生まれてきますからね。
出雲 性善説、オープン、リベラル、グローバリズム、コーポレーション、そしてサステナビリティー。これらは非常に相性がいいんです。オープンにやっていけば、それぞれが結びついて、加速度的に社会が変わっていくと思います。
佐藤 ただ、いまロシアのウクライナ侵攻があり、世界中がそれへの対応を余儀なくされています。戦争ほどCO2を出す行為はありませんし、ロシアからの天然ガス供給減で、ヨーロッパには燃料を石炭に戻そうという動きもあります。
出雲 私には、旧世代の、旧来の価値観で始まった問題に見えます。その結果を、次世代のオープンで、性善説に基づき、サステナブルな社会を作ろうとしている若い人たちに押し付けないでほしい。そうでないと、もう制度や国家が信じられなくなると思いますね。
佐藤 考えてみれば、出雲さんのお仕事も、グラミン銀行も、国家ではなく社会についてのものです。
出雲 国家のために事業をしているわけではありませんし、ユヌス先生もそんなことはおっしゃらない。
佐藤 まさに「サステオ」がそうで、国家ではなく社会を変えるものです。それがこのエネルギー危機の時期に登場してきた意味は非常に大きいと思いますね。
[3/4ページ]