巨人、史上二度目となる最下位の危機…「補強失敗」「閉塞感」をどう乗り越えるか?

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「現役ドラフト」で他球団に

 育成選手が支配下登録に切り替えられる期限は7月31日までとなっているが、そのタイミングで支配下に上がれる選手は一握りだ。巨人に限らず、昇格を逃した選手は、残りのシーズンで練習に身が入らないという話も聞いたことがある。

 また、今年のオフ、いわゆる“飼い殺し”を防ぐために、出場機会に恵まれない選手を他球団に移籍できるようにする「現役ドラフト」が実施されることになったが、「制度の実施を最も喜んでいるのは、巨人の選手ではないか」という声があるという。

「少し前には、大田泰示が日本ハムに移籍してブレイクしたほか、沢村拓一もロッテに移り、クライマックス・シリーズ進出に貢献し、その後、メジャーに羽ばたいた。最近では、田口麗斗がヤクルトで欠かせない選手になっており、山本泰寛も阪神で成績を伸ばしています。そして、衝撃的だったのは、山下航汰ですね。いきなり二軍で首位打者を獲得したホープが、育成再契約を打診されたものの、それを拒否して退団してしまった。結局、他球団は獲得せずに、山下は社会人野球でプレーを続けていますが、巨人の首脳陣に与えたショックは大きかったはずです。巨人で出番がないなら、『現役ドラフト』で他球団に行きたいと考える選手は少なくないのが実情ですね」(前出のスポーツ紙記者)

 以前は、巨人のユニフォームを着て引退した方が、その後の生活も大きくプラスになるとよく言われていたが、世の中全体が不安定な経済状況であり、引退後に活躍しているプロ野球OBも、現役時代の所属チームとは関係ないというのが一般的になっている。こうした事情もあって、巨人への“こだわり”を持っている選手が確実に少なくなっている。

 2024年3月にファームの新球場が開場する予定されるなど、“育成の巨人”を掲げているが、現在のチーム事情や関係者の話を聞いても、前途は多難という印象は否めない。巨人は、低迷から脱出し、チームを覆う“閉塞感”をどのように払拭していくのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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