巨人、史上二度目となる最下位の危機…「補強失敗」「閉塞感」をどう乗り越えるか?
補強失敗の典型例
シーズン開幕前は優勝候補に推す解説者が多かったものの、なかなかチーム状態が上がらない巨人。Aクラス入りはおろか、このままでは2リーグ制史上2度目となる最下位に沈む可能性すら見えてきている。昨年は終盤に失速して借金1でシーズンを終えていたとはいえ、今年もこれほど苦戦すると予想していた人は少なかっただろう。では、低迷の要因はどこにあるのだろうか。【西尾典文/野球ライター】
【写真】「巨人」森友哉、浅村栄斗獲得で“大阪桐蔭”が一大勢力に?
スポーツ紙の担当記者は以下のように解説する。
「やはり大きいのは、補強の失敗ですよね。原辰徳監督の復帰が決まった2018年オフにはFAで広島から丸佳浩を獲得して、リーグ連覇に繋がりましたが、それ以降はチームの核となるような選手を獲得できていない。20年のオフ、DeNAから獲得した梶谷隆幸や井納翔一は、“補強失敗の典型例”ですね」
梶谷は、今年5月に左膝内側半月板縫合手術を受け、今季の復帰は絶望的で、井納は7試合に登板し、わずか1勝と全く戦力になっていない。さらに、前出のスポーツ紙の担当記者は「そもそも大物選手のFA移籍が減っている」と指摘したうえで、こう分析している。
「昨年、FAで移籍した選手は又吉克樹(中日→ソフトバンク)だけでした。鈴木誠也(広島→カブス)のような大物はメジャーに向かいますし、新型コロナによる社会情勢の不安もあってか、それなりの選手は環境を変えない“安定志向”を目指すケースが増えています。また、巨人は以前、ラミレス(ヤクルトからFA移籍)といった他球団で成功した外国人選手を獲得していたが、最近はこうした外国人選手が少なくなっている。長年得意にしていた補強戦略が機能せず、主力の高齢化を支え切れてない。これが“巨人低迷”の大きな要因だと思います」
選手の間に“閉塞感”
近年、巨人がFAで獲得した選手で、現在もレギュラーと言えるのは丸だけだ。梶谷と井納は前述したとおりで、その他の選手は、引退やトレードで既に球団を去っている。FAで獲得した選手は、中堅やベテランが中心であり、長くチームに貢献できる例は多くはない。「次から次へ」とFAで有望な選手を獲得できなくなれば、当然、チーム力の低下につながってしまう。
もちろん、巨人内部でも、それに対する問題意識があり、ドラフトで育成選手を多く獲得し、「三軍制」を導入するなど、若手の底上げに動いている。とはいえ、それも今のところ機能しているとは言い難く、選手の間に“閉塞感”が漂っているという。
巨人の球団関係者は、球団が抱える問題について、こう指摘する。
「昨年は育成出身で、外野手の松原聖弥がレギュラーを獲得したかに見えましたが、今年は新外国人が加入したことで、出場機会が減っています。従来の補強戦略でチームが勝てばいいのですが、低迷してしまうと、チームの雰囲気が悪くなる。これは、一軍に限った話ではなく、二軍、三軍でも起こっています。例えば、一度、支配下登録された選手が再び育成選手になることも珍しくありません。これは、故障や力を発揮できないケースだけはなく、野放図な補強によって登録枠がなくなることが影響している。こういう状況になると、なかなか若手選手のモチベーションが上がってこない。育成選手を多く抱えるソフトバンクにも、少なからず同じような問題はあるようですが、巨人のほうが、さらに根が更に深いように見えます」
[1/2ページ]