50歳で「一生に一度の恋」に落ちた不倫夫 密会部屋での逢瀬の果てに、思わぬ展開が待っていた

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妻もまた…

 ところが今年になって、龍太さんは平日昼間、偶然、ホテル街を歩いている妻をタクシーの車内から見かけた。赤信号で車が止まったとき、すぐ脇のホテル街を妻と男がこちらに向かって歩いていたのだ。彼はあわてて目をそらし、再度、見直して確認した。

 相手は異動する前の自分の上司であり、独身時代の妻の上司でもあった男性だった。ふたりは腕を絡めてベタつきながら歩いていた。上司は定年間際のはずだ。ふたりはいつの間にか、復活していたのか。

「妻は独身時代の恋を引きずっていたんでしょうか。なんとも言えない気持ちでしたね。どう言ったらいいんだろう。ショックというのとは少し違う、複雑な感じ。ただ、少し時間がたつと、妻もまた、恋をしているならそれでいいんじゃないかとも思えてきました。僕が唯一の恋を全うしたいと思っているのと同じように、妻にも元上司との恋が唯一無二かもしれない。僕が泊まりだと言ったとき追求してこなかったのは、自分も追求されるとまずいからでしょう。狐とタヌキみたいな夫婦だなと笑いがこみ上げてもきました」

 こうなると老後の生活はどうなるかわからないなと、龍太さんは感じている。家庭生活は続けながら、それぞれ恋をしている人と過ごす時間をもつのもいいかもしれない。冬美さんにも「秘密」がある。似たもの夫婦ということなんでしょうかねと、龍太さんは少しだけ虚ろな笑いを浮かべた。

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 およそ2年前から始まったという、龍太さんの「一生に一度の恋」。弁護士相談プラットフォームを運営する株式会社カケコムが実施した2020年のアンケート調査では、不倫関係の70%が3年以内に終わっているというから、あと1年が龍太さんと佳耶子さんにとっての山場ということになる。

 不倫を続けつつも、龍太さんは自ら家庭を壊すつもりはなく、佳耶子さんとの結婚も考えてはいない。関係を割り切っていると見えなくもない。妻が上司と関係をもっていたこと、そしてそれが継続中だと知れば怒ってもよさそうだが、そうもしない。ここからも彼の性格や人間性が窺える。

 一方の佳耶子さんはどうか。

 業務上の必要にかられてというのを口実に、密会のためのマンションまで借りだした。龍太さんと比べると、すこしのめり込みすぎているような印象を受ける。片方が距離感を誤り不倫関係が終わったケースは、過去の亀山氏の記事でもたびたび取り上げてきた。

 もし、龍太さんの「一生に一度の恋」が終わってしまえば、残るのは上司と不倫を続ける妻との暮らしである。どうなるか分からないという「老後の生活」の可能性として、想定しているのだろうか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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