「ダウンタウンvsZ世代」 異例の高視聴率を獲得した「仕掛け」を深堀り
8月13日に放送された日本テレビの特番「ダウンタウンvsZ世代 ヤバイ昭和あり?なし?」が話題になっている。単発の特番でありながら多くの視聴者を獲得しており、世帯視聴率は12.5%、個人視聴率は8.4%だった(関東地区、ビデオリサーチ社)。個人視聴率は8月8~14日の1週間の「その他の娯楽番組(バラエティ番組)」部門でトップの数字である。
【写真9枚】若手女優の中で“超異質な存在” “めるる”こと生見愛瑠
この番組は、「昭和世代」の中高年タレントと「Z世代」の若いタレントをゲストに招いて、昭和世代の文化や風俗流行を紹介しながら、世代間ギャップを浮き彫りにしていくというものだった。レギュラー番組に関連する企画以外でダウンタウンが日本テレビで特番を仕切るのは6年ぶりのことだという。
この番組がなぜ多くの人に見られたのか。もちろん、最大の理由は「面白かったから」ということに尽きるのだが、そこをさらに深く掘って分析していきたい。
一流のテレビマンの手腕
この番組の企画・総合演出を務めたのは、日本テレビの高橋利之氏。「行列のできる法律相談所」「世界一受けたい授業」「有吉反省会」「笑ってはいけないシリーズ」などの総合演出を手がけてきた日本テレビでも有数のカリスマディレクターである。
彼がこれまで作ってきた番組は、いずれも「娯楽性」と「大衆性」を見事に両立させてきたものばかりだった。娯楽性とは、とにかく面白いものであるということ。大衆性とは、多くの人に愛されるものであるということだ。
どんな分野であっても、際限なく質を高めていくと、それに伴って大衆性が失われてしまうのが普通である。超一流の美術品の価値というのは、美術の専門家にしか理解できないだろう。エンターテインメントの世界でもそれに近いことがしばしば起こる。プロの芸人や熱心なお笑い愛好家が心の底から腹を抱えて笑うようなことは、多くの人には理解できないものだったりすることもある。
しかし、高橋氏をはじめとする一流のテレビマンの手がける番組というのは、娯楽性を高めながらも、大衆性を置き去りにしない。彼らはできるだけ間口を広げて、わかりやすくて面白いものを提供しようとしている。
「ダウンタウンvsZ世代」でも、VTRの作り方にそのようなこだわりが感じられた。昭和の文化を単純に紹介するだけでなく、スタジオトークのフックになるような題材が厳選されていたし、ひとつひとつのVTRの瞬間ごとに視聴者を逃さない工夫が張り巡らされていた。
[1/2ページ]