悪童なのに応援したくなるテニスプレーヤー・キリオス コート上と正反対な素顔とは(小林信也)
大坂なおみと同型
キリオスが愛用するのは大坂なおみと同じヨネックス「EZONE 98」のカスタマイズ版。それほど難しい注文はない。ただひとつ、他のプレーヤーと大きく違うところがある。
「試合中あまりラケットを交換しません。1本のラケットで戦うこともあります」
通常、選手たちは9ゲームごとのボール交換に合わせてラケットを替える。ガットが緩んでくるからだ。キリオスは気にしない。
「グリップも含めて感覚が途中で変わるのが嫌なのでしょう。試合全体をひとつの流れで捉えるイメージを大事にしているようです」
そういう独自の感性を知ると、キリオスを応援したくなる。それにしても、悪童が少しずつ変化・成長している要因は何だろう?
「ガールフレンドの存在ではないでしょうか。ずいぶん精神的に落ち着きました」
ネットを検索すると、面白い映像に出合った。ウィンブルドン前の練習風景。練習コートで優勝候補のひとりナダル(スペイン)が2人のレシーバーを相手に鬼気迫るストロークを打ち込んでいる。ひとつ置いた右のコートで、キリオスはガールフレンドにテニスを教えている。初心者なのだろう。まるでピンポンのような打ち合い。対照的なナダルとキリオスの姿。勝ち進んだふたりは、準決勝で対戦が決まった。ところが、ナダルは準々決勝で腹部のケガを悪化させ、準決勝の舞台に立てなかった。不戦勝で決勝進出の権利を手にしたのは、ガールフレンドと楽しい時間を過ごしたキリオスの方だった。
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