悪童なのに応援したくなるテニスプレーヤー・キリオス コート上と正反対な素顔とは(小林信也)
錦織圭をリスペクト
「普段のキリオスは静かで優しい青年です。なぜ試合中あのような行動をするのか、私たちは理解に苦しむことがよくあります」
そう話すのは、10年以上、キリオスにラケットを提供し続けるヨネックスの下条紀臣(海外営業部)だ。
「オーストラリアの代理店から紹介されて初めて会ったのは彼が13歳の時です。その時は、ポッチャリして、かわいい少年でした」
ウィンブルドン決勝戦の直前、キリオスがインスタグラムに13歳当時の写真をアップした。ひと目でそれがキリオスとわかる人は少ないだろう。ふくよかでかわいい笑顔。ホームランをよく打つ野球少年か、期待の相撲少年のようだ。が、4年後に再会した時、キリオスは別人になっていた。
「キリオスの最初の覚醒は、あの4年間の体の変化でしょう」
大阪市長杯ワールドスーパージュニアで来日したキリオスは見違えるほど背が伸び、精悍な若者に変身していた。その大会で優勝。将来性を確信した下条は、会社に契約を進言する。
「キリオスは、無名のころから支えてくれた人たちを大事にする意識が強くあるようです。私たちにもすごく献身的です。例えばジュニア・クリニックのゲストが急にキャンセルになった時、キリオスに代役を頼むとほとんど引き受けてくれます。ジュニアにはとくに熱心に指導してくれます」
コート上の悪態と正反対の誠実さ。
「実績のない時代から練習パートナーになってくれた錦織圭選手にはリスペクトがある。だから、錦織選手との試合では決してラフなプレーはしません」
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