資産家殺害「高井容疑者」自殺で思い出す「尼崎連続殺人事件」 角田美代子との共通点も

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もう1つの共通点

 凛容疑者が自殺を図った独房にカメラは設置されていなかった。ある警察OBは「完全に警察の失態。容疑者が逃走をほのめかしたなら、留置管理課の職員は房の前に居座って監視するくらいでないといけない。見回りの時間も読まれていたかもしれない」と話す。警察の留置場の管理の在り方について再検討が求められよう。

 さて、高槻の事件も尼崎の事件も大きな共通点がある。それは「養子縁組」という制度を使ったことだ。角田は目を付けた人物を自らの親戚の養子にする手続きを行っていた。高槻の事件のように、おそらくだが「本人(直子さん)が知らない間に」ではなく、「自分のことを考えてくれている」と信じ込ませてのことだろう。また、李正則(無期懲役で服役中)という共同生活者らが恐れた体格の良い「暴力装置」は、角田が直接養子にしていた人物だ。

 養子縁組は書類さえ整えば成立してしまうようだ。本人が知らない間に、勝手に縁組することが可能なら、財産目当ての犯罪にも利用されよう。役所は、書類がそろえば機械的に「縁組」を認めるのではなく、双方の当事者に対面確認するようなことが必要ではないだろうか。
(一部敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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