フランスで「ONE PIECE」上映中に観客が大暴れ… お国柄?日本アニメの変わった“観られ方”
大統領もファンといわれるフランスのONE PIECE人気
フランス内の日本アニメのファンは、いわゆるオタクを意味する「geek(ギーク)」と呼ばれる人たちも多いですが、ONE PIECEは小さな子どもから10代の若者を中心に、幅広い層に人気があります。
そもそもフランスは日本に次ぐマンガ大国と言われています。ONE PIECEコミックはフランスを含む海外60カ国で約1億部販売されていますが、そのうち2,800万部はフランスでの売上です。
コミックも現在は英語より先にフランス語版が出版されています。出版部数も第100巻は初版250,000部と、フランスの権威ある文学賞「ゴンクール賞」受賞作並みの部数に達しています。
フランスでは毎年、若者が文化施設や書籍購入などの文化活動のために使用できる約4万円分(300ユーロ)のクーポン「カルチャーパス」が配布されます。ところが、パスの半分以上はマンガの購入に利用され「マンガパス」と揶揄されるほどなのです。2021年5月末から約半年で購入されたデータでも上位をマンガが占めていて、中でもワンピースはダントツに多く、308,743部購入されました(2位以下も鬼滅の刃(196,114 部)、進撃の巨人(186,578 部)とやはり日本のマンガです)。
昨年、東京オリンピックの際に来日したエマニュエル・マクロン仏大統領は、ONE PIECEの作者・尾田栄一郎氏から直筆メッセージ入りの原画を贈られたことを自身のTwitterで報告しています。普段は数千件の「いいね!」がつく大統領のアカウントですが、このツイートは9万5千件も「いいね!」されました。
この時「フランスは大統領もONE PIECEのファンだ」という声がありましたが、選挙に向けて若者の関心を引く戦略では、という見方もあり、本当にマクロン大統領がマンガやONE PIECEのファンなのかはわかりません。どちらにしても、ONE PIECEがフランスで人気作で、幅広い層にファンがいることは間違いありません。
「ヒートアップのあまり暴れだす」のは珍しくない?
フランスでは、サッカーの試合などでも興奮したファンが暴動を起こしたり喧嘩したり発煙筒を投げたり、といったトラブルが時折起こります。政治デモでは、ゴミ箱を道路にぶちまけ、路上の車を倒して火をつけて燃やしたり、店舗や銀行のATMを破壊したりする暴徒の様子がテレビで報じられます。見慣れたとまではいわなくても、フランス人にとって「ヒートアップのあまり暴れだす」ことは珍しくない光景なのでしょう。
だから、映画館で騒ぐというのも、日本で同じことをした場合とはニュアンスが少し違います。もしかすると、ストレスを発散させる「ガス抜き」のような意味があるのかもしれません。日本でいうとカラオケや飲み会で羽目を外して騒ぐ、くらいのことなのでしょうか。
くりかえしますが、節度を守らずに騒いで他の観客に迷惑をかけたり上映妨害をすることは許容できることではありません。前述した劇場Le Grand Rexも、
〈今後の上映ではこのようなことにならないようしっかり対応する〉
ともコメントしています。
日本アニメのファンが多いフランス。映画が「マナーを守らず暴れられるストレス発散」としてではなく、観覧を妨害することなく、日本アニメ映画の評判を落とすことなく、多くの人に楽しまれてほしいです。
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