上級国民がダマされる「M資金詐欺」は、ほかの詐欺話と何が違うのか
カモは上級国民限定
「M資金詐欺なんて昭和の時代の古びた詐欺で、とっくに消滅していて、いまさらダマされる人なんているわけがないでしょう」
──と言う人がよくいるが、それは勝手な勘違いというもので、M資金詐欺は、現在も横行している。ちなみに30億円の被害が発生した事件は、2020(令和2)年に起きたものだ。
M資金詐欺は「旧日本軍の隠し財産を原資にした“M資金”と呼ばれる特殊な大型資金導入」という謳い文句ではじまるため、詐欺師たちはカモとするターゲットを大手企業の役員や実業家といった、いわゆる“上級国民”に絞っている。
決して一般家庭の主婦や普通のサラリーマンを狙うことはない。もしかしたらこうした特徴が、結果的にM資金詐欺の実態を秘密裏にしてしまっているのかもしれない。
それにしても、“上級国民”と呼ばれてもおかしくない社会的地位の高い面々が、よくもこんな詐欺にダマされるもんだと呆れてしまう。だが、そもそもの前提として、彼らもM資金伝説のファンなのだ。
前々からファンだった人もいれば、M資金伝説について詳しく知ったことがキッカケとなってファンになったばかりというタイプもいる。
M資金伝説のロマン
先述した通り、詐欺師に騙される人は、詐欺話が提示する世界観にハマってしまうことが原因だ。詐欺師は、M資金の世界観を信じそうな資産家、実業家、企業の会長などを見つけると、詐欺を仕掛ける。
M資金詐欺は、旧日本軍というワードが根幹を占める。物語としては古びているはずなのに、現在でも通用してしまうインパクトを秘めている。
温故知新と言うのか、詐欺の基本と言うのか、なかなか表現に困ってしまうが、まるで悪質な新興宗教のように、今日も被害者を生み出している。
当たり前だが、何を信じるのかは人それぞれの自由だ。どんな趣味や夢を持つのかも同じである。
とはいえ、あまりの不景気で、「失われた30年」と呼ばれた平成時代の後遺症は、令和になっても現存している。
夢も希望も持ちがたい時代が続いている中で、M資金伝説にロマンを感じ、伝説を追い続ける者がいるのは理解できる。許しがたいのは、M資金を利用した詐欺師たちの卑劣さだ。
彼らは「バカが夢を見る」、「ダマされた奴は社会勉強代を支払ったと思えばいい」、「勝手に信じた奴が悪いだけ」などとうそぶく。だが、ダマす詐欺師が絶対悪いに決まっている。
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