上級国民がダマされる「M資金詐欺」は、ほかの詐欺話と何が違うのか
「使い道」も含む伝説
M資金伝説には、他とはハッキリと違う物語が存在している。それは「隠し財産の使い道」に関する物語である。
再び徳川埋蔵金伝説を例に挙げるが、この伝説の楽しさは「埋蔵金がどこに埋まっているのか?」という宝探し的な感覚によるところが大きい。
「実際に徳川埋蔵金が掘り起こされて使用された」とか、「大手銀行が徳川埋蔵金を原資にした融資を行っている」といった類の伝説はない。
ソロモンの秘宝もリマの秘宝も、「いったいどこに隠されているのか?」というのが最大の関心事で、それが冒険のゴールでもある。だから徳川埋蔵金伝説のファンたちは、純粋に埋蔵金のありかを追い求める。
ところがM資金伝説の場合、「実は戦後の日本経済復興にM資金が使われた」とか、「今でも政府がM資金を極秘運用して日本経済を活性化させている」というような、「隠し財産の使用方法」までも伝説の中に含まれている。
人によっては、むしろ使用方法だけに極端な興味を持っていたりもする。これこそが他の伝説とは違うM資金伝説の決定的な特徴であり「面白さ」なのである。
「使い道」に夢中のファン
未だに見つかってもいないシロモノの使い道で盛り上がるとは、なんとも滑稽な話でしかない。だが、M資金伝説のファンたちは、「隠し場所の特定」よりも「財産の使い道」のほうに日夜夢中になっている。
使い道にまつわる物語のフォーマットとしては、
【1】M資金を管理している組織が(日本政府、天下り組織、CIA、イギリス政府、極秘組織……etc.)
【2】経済活性化のため(株価操作、企業支援、指定産業強化、コロナ救済……etc.)
【3】選ばれた企業に(大手企業、上級国民限定企業、一定の条件を満たした企業……etc.)
【4】巨額の資金を導入する(数千億円から数兆円)
──といった話である。また、これに付随して、
【5】「去年、ある企業にM資金が導入された」or「先月、ある社長のところに無利子無担保で資金導入の話が持ち込まれ、現在、審査中」
というような“成功事例”がくっついてくる。こうしたフォーマットに則った物語が、M資金ファンたちの間で蔓延している。
ファン同士の情報交換と言ってしまえばそれまでだが、とにかくM資金伝説のファンは、過去の話としてではなく、現在進行形のネタとして日常的に盛り上がっている。
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