妻は「ホスト依存症」で借金400万円、それでも離婚しない夫の“負い目”とは

  • ブックマーク

止まっていなかったホスト通い、ついに警察沙汰に

 比佐子さんとの再会から数ヶ月後、妻の顔色がひどくよくないことがあった。少し会社を休むと言って3日ほど寝込んでしまった。

「病院にも行こうとしないし、母がおかゆを作っても口をつけない。深夜、また借金でもしたのかと思わず嫌味を言ってしまいました。人間、誰しも失敗はある。だから僕は彼女を責めなかった。具合が悪いなら病院に行くべきだ。それなのに誰の言うこともきかず、自室で寝込んでいるのはおかしいだろと。すると妻は黙ってスマホを見せました。そこには既読がつかないアキラへのメッセージが表示されていた。ブロックされていたんです。つまり、またホストクラブに通い、アキラから嫌われたということなんでしょう。また通っていたのか、と言ったら、どうしても諦めがつかなかった、と。『でもよかったじゃないか、これで諦めがつくだろ』と言ったら、妻は起き上がって僕をじっと見つめました。ボロボロ涙をこぼしながら。それほどまでに好きだったのかと、そのときはかなりショックでしたね。遊びの延長だからこそ、僕は何も言わなかった。だけど妻は本当に恋をしていた。まあ、本当の恋というものが僕にはよくわかりませんが……」

 妻は友人に50万円ほど借りていると言った。悪いけど自分で何とかしてほしい、それが返せないなら離婚も考えてくれと淳一郎さんは言った。何もかも嫌になっていた。妻が本当に料理教室に通っていると思い込んでいた自分も、おめでたいものだと感じたそうだ。

「料理教室には何度か行っていたようですが、ちょっと顔を出してその後、ホストクラブに行ったりしていたんでしょう」

 その1週間ほどあと、深夜に警察から電話があった。店を出禁になった優理子さんが、店の前でアキラさんが出勤してくるのを待ち伏せしていたため、店から警察に通報されそうだ。

「迎えに行きましたが、優理子はうつむいているだけだった。警察に『大変ですね』と同情されましたよ。妻はそういうことがみっともないと思ってない。それだけアキラに必死だったんでしょうけど」

 夫に対して、好きな男の話をあけすけに語ったあげく、警察に通報されるとは。それが夫を傷つけているともわからない。かなり重症な“恋”ではある。

今度こそ妻を信じたい

 それがつい半年ほど前のことだ。結局、彼女は50万円の借金を次のボーナスで返すと友人に約束したらしい。そして「ごく普通の生活」に戻った。ただ、アキラさんからブロックされたのは彼女の心を地獄に突き落としたようだ。

「子どもたちは7歳と6歳。かわいい盛りです。でも妻はこの2年ほどの間、子どもより自分の気持ちを優先させ続けてきた。正直言って、それは許せない。ただ、僕にもどうしようもない欠点もある。今回、妻には『どうするつもりか、はっきりさせてほしい』と言いました。離婚はしたくないと妻は言いました。今度こそ、妻を信じたいと思っています」

 コロナ禍に加えて非日常的なことばかりが続き、淳一郎さんは「心が削られている」と感じている。それでも子どもたちと母親には、妻のしたことを隠し通そうと決めているそうだ。性的な行為だけが夫婦の愛情ではない。それを越えた「愛」を、優理子さんは感じられなかったのではないだろうか。

 何とかやり直したい。淳一郎さんはしっかり前を向いていた。

次ページ:ホスト依存症を「病気」として治療する

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[5/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。