妻は「ホスト依存症」で借金400万円、それでも離婚しない夫の“負い目”とは

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「男性がキャバクラに行くのは浮気か否か」という議論があるが、女性がホストクラブに通うこともまた様々な問題を引き起こす。それどころか、客との関係の築き方の違いゆえか、後者のほうが深刻な事態を招いてしまうことも珍しくない。

 新宿・歌舞伎町のホストが、客だったガールズバーの女性に包丁で刺された3年前の事件は記憶に新しい。後に被害者はインタビューで「あの子のなかにも僕を刺す理由があったと思う」と述べている(2019年7月9日配信「 NEWSポストセブン」)。

 ひとたび夢中になると、男性のキャバクラ通い以上にはまってしまうケースも多いようで、「ホスト依存症」という言葉もある。

 もし「妻」がホスト依存になってしまったら……今回ご紹介するのはそんな夫のケースだ。レポートするのは、『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があり、男女の問題を30年近く取材してきたライターの亀山早苗氏。

 ホストに限らず、何かに依存してしまうパートナーとの在り方を考える参考になるかもしれない。

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自分を責める夫

 接客業の異性と親しくなることを「不倫の恋」といっていいのかどうかはわからない。だが、「裏切られた思いはある」と語る男性がいる。妻は彼が気づかないうちにホストクラブに通い始め、気づいたときには借金を背負っていた。

「僕が悪いんですかねえ」

 福永淳一郎さん(44歳・仮名=以下同)は眉間に深いしわを寄せた。年齢の割に老成した雰囲気を漂わせている。彼の妻がホストにはまっているのがわかったのは1年半ほど前。400万円ほどの借金があったので、彼が肩代わりして精算した。

「離婚も考えました。だけど子どもがまだ小さい。それに妻は僕の母のめんどうをよく見てくれる。もともとやさしい女性なんです。だからこそ別れられなくて」

 淳一郎さんは、東京に隣接する県で生まれ育った。姉と妹にはさまれた長男で、都内の大学に通い、都内の会社に就職した。姉と妹はそれぞれ結婚して家を出ており、彼は30代半ばまで独身だった。

「女性が苦手だったということもあって、結婚なんてしなくてもいいと思っていました。でも父を見送って、母と2人暮らしになったとき、このままだと一生、親以外の家族がいない人生になる、しかも家庭という閉ざされた空間で老老介護になるんじゃないかと不安に襲われたんです。それで結婚相談所に入会、最初に出会った3歳年下の優理子と結婚しました。優理子は母と同居でもいいと言ってくれました」

 36歳で結婚し、翌年に長女、年子で次女をもうけた。母と優理子さんの関係は必ずしもいいわけではなかったが、優理子さんが仕事を続けて顔をつきあわせる時間が少なかったため、衝突も起こりにくかった。

「ときには母に子どもたちを見てもらって、妻とふたりで食事をして帰ることもありました。僕なりに気を遣っていたつもりです」

 彼は一言ずつ区切りながら、ゆっくりと話した。言葉を選ぶその様子は律儀な会社員そのものだ。

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