みそ汁は「若返りスープ」だった 「凍み豆腐」「卵かけご飯」…幸せな老後のための伝統長寿食

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長寿食・凍み豆腐とは?

 みそ汁にとどまらず、大豆製品はどれも健康食といえますが、他に長寿食としてお薦めなのは凍(し)み豆腐です。もともと水分が88%を占める豆腐を、冬の北風にさらして凍結乾燥させ、味とタンパク質を凝縮させたものが凍み豆腐です。関西では、高野山で精進料理として食べられていたことから、高野豆腐とも呼ばれています。

 この凍み豆腐はとても高タンパクな食品で、100グラム中に49グラムもタンパク質が含まれています。牛肉やマグロなどの実に倍以上の数値です。また、先に触れたトリプトファンも豊富に含まれています。さらに、「食べるトランキライザー(抗不安薬)」とも呼ばれるカルシウムも100グラム中660ミリグラムと豊富。カルシウムが不足するとイライラしがちであることはよく知られています。

 とどのつまり、凍み豆腐は身体にも心にも栄養満点な食品といえるのです。高野山で煩悩を抑えて修行に励む僧侶たちが好んで食べたのもうなずけます。

「魏志倭人伝」にも

 大豆をはじめとする食材に、健康長寿につながる日本の伝統食の素晴らしさがある一方、「食べ方」にも日本人の知恵が集積されています。それは「きんさんのみそ汁」にも生かされていた「生食」です。例えば、最近は若い人たちの間で「TKG」とも言われている卵かけご飯。外国の人はあのズルズルという音と食感がまるで鼻水のようだと忌避する傾向にあるようですが、日本人は昔から卵かけご飯を食してきました。江戸後期にはこんな川柳が詠まれています。

〈生卵 醤油の雲に 黄身の月〉

 あるいは和食の代表ともいうべき握りずしも、生の魚の切り身を酢飯と一緒に食べる生食です。つまり日本人は新鮮な食材をそのまま頂くことが好きなわけです。事実、「魏志倭人伝」にも、〈冬夏生菜を食す〉との記述があります。〈生菜〉とは生のおかずのことであり、卑弥呼の時代から日本人には生食文化が根づいていたことがうかがえます。

 煮たり焼いたりせずに生のまま食べれば食材の持つ栄養をそのまま摂取できます。調理過程での栄養成分のロスがないわけです。同時に調理で油を使わないため、この点でもヘルシー。生食にも和食の強みがあるのです。

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