みそ汁は「若返りスープ」だった 「凍み豆腐」「卵かけご飯」…幸せな老後のための伝統長寿食

ドクター新潮 健康 食事

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だしに「幸せホルモン」

 そして、全体のバランスだけでなく、日本の伝統食はそれぞれがとてもヘルシーで、日本人の健康と長寿を支えてきました。

 お米については先に説明しましたが、それ以外では何をさしおいてもみそ汁です。数年前、ニューヨークで講演する機会があったのですが、スピーチが終わった後のパーティー会場で、現地の中年女性がこう質問してきました。

「日本の女性はおばあちゃんになってからもお肌が美しく、実際の年齢を聞いて驚く。何を食べたら日本の女性のように若い肌のままで年を重ねることができるのでしょうか?」

 私はすかさずこう答えました。

「みそ汁を飲むことです」

 豆腐や季節の野菜を具に入れることが多いみそ汁には、まずみそに大豆タンパク由来のアミノ酸がたっぷり入っています。その上、だしに使う鰹節には「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの材料となるトリプトファン等の必須アミノ酸が多く含まれています。つまり、肌の若さを保つアミノ酸が植物質・動物質ともに入っている。みそ汁は野菜たっぷりの「アミノ酸スープ」なのです。

 さらにみその材料である大豆には、脳の働きを活性化させるレシチンが多く含まれています。加えて、植物性の女性ホルモンといわれるイソフラボンも豊富です。みそ汁は「若返りスープ」ともいえるのです。

きんさん、ぎんさんも欠かさなかったみそ汁

 実際、冒頭で触れた「きんさん、ぎんさん」のきんさんは、朝晩みそ汁を欠かさないとあるインタビューに答えていました。具は大根や生卵。後でも触れますが、「生」も和食の素晴らしさのひとつです。

 ぎんさんも、わかめを具にしたみそ汁を好み、わかめは髪にいいと言っていたそうです。

 きんさん、ぎんさんはみそ汁を欠かさなかった。この事実そのものが、みそ汁が日本人の健康と長寿を支えてきたことのひとつの「生きた証」といえるのではないでしょうか。

 また、日本史を振り返ってみると、みそを愛した女性としては平安時代の歌人である和泉式部が挙げられます。彼女は大変恋多き女性で奔放な性格として知られていますが、こんな歌を詠(よ)んでいます。

〈花に逢へば みぞつゆばかり惜しからぬ 飽かで春にもかはりにしかば〉

〈身ぞ〉と〈みそ〉が掛詞になっていて、〈あなたに恋していて、身も惜しくない、貴重なみそだってあげちゃいますわ〉というわけです。平安きっての魔性の女性である和泉式部の美の秘訣(ひけつ)も、みそにあったのかもしれません。

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