みそ汁は「若返りスープ」だった 「凍み豆腐」「卵かけご飯」…幸せな老後のための伝統長寿食

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 平均寿命はたしかに延びている、しかしそこには落とし穴が……。人生100年時代を迎え長寿はより身近なものとなりつつあるが、「70代」と「80代」の間にはある“壁”が存在している。それを乗り越え、幸せな老後を送るための日本の伝統食を専門家が伝授する。【永山久夫/食文化史研究家】

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 なぜご長寿姉妹として知られた「きんさん、ぎんさん」は、ともに100歳を超えて、なお明るく元気でいられたのでしょうか。

 人生100年時代といわれている今こそ、私たち日本人はこのことの意味に目を向けるべきではないかと私は考えます。きんさん、ぎんさんに共通していたこと、そのひとつは、私たちが古くから親しんできたある伝統食です。かつては、多くの日本人が当たり前のように食していたはずなのですが……。

〈こう問いかけるのは、料理研究家で食文化史研究家でもある永山久夫氏だ。研究の成果が認められ、平成30年度文化庁長官表彰を受けた永山氏は、NHKの「チコちゃんに叱られる!」に出演するなどして、日本の伝統食の魅力と効力を伝え続けている。

 そんな永山氏のもとには、近年、講演依頼が増えているという。飽食の時代にあって、ヘルシーな和食が再注目されている証といえよう。

 自身90歳ながらかくしゃくとして研究を続けている永山氏が、「長寿・健康」と「日本の伝統食」の関係について語る。〉

「寿命」と「健康寿命」の間に10歳前後の差が

 男性81.47歳、女性87.57歳。日本人の平均寿命はここまで延びました。日本が世界に冠たる長寿大国であることは論を俟(ま)たないでしょう。しかしこの状況を、私は諸手をあげて寿(ことほ)ぐ気にはなれません。

 男性72.68歳、女性75.38歳。これは日本人の健康寿命です。「寿命」と「健康寿命」の間に10歳前後の差ができてしまっている。これは由々しき問題ではないでしょうか。

 なぜなら、この人生の最後の約10年を、私たちはほとんど「医療の力」で生き延びているといえるからです。これでは医療費もかさみますし、治療を受ける本人も楽ではありません。身体はままならず、お金の面でも苦労する。そう考えると、やはり「平均寿命≒健康寿命」という状況に持っていかなければなりません。つまり、今の日本人にとっては、単に寿命を延ばすことだけでなく、どうやって「ピンピンコロリ」を実現させるかが重要ではないかと思うのです。

 2060年には日本人の平均寿命は男性が84歳、女性は91歳になると予測されていて、百寿者は今以上に身近な存在になるでしょう。文字通り人生100年時代を迎えるわけです。しかし、今のようにほぼ医療の力に頼ったままでは、寿命は延びても健康寿命は延びない、それどころか縮まってしまうのではないかとすら私は危惧しています。

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