不動産バブルがはじけた韓国 通貨売りと連動、複合危機に

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怪しげな「楽観論」を唱える韓銀総裁

 8月25日、韓銀の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は記者懇談会で「通貨危機は来ない」との楽観論を開陳しました。聯合ニュースの「李昌鏞『ウォン安は流動性のためではない…1997・2008年とは異なる』」(8月25日、韓国語版)から楽観論の根拠を拾います。

①最近のウォン安はドル高のためであり、韓国の流動性や信用度に問題があるからではない。
②IMF(国際通貨基金)が必要とする流動性の基準と比べ、韓国の外貨準備は少ないとの指摘があるが、韓国の外貨準備額は世界9位である。外貨準備の多い国にとってそんな基準は意味がない。
③米国とスワップを結んでいる英国やユーロ、カナダの通貨は皆、ドルに対し安くなっている。スワップがウォン安を防ぐとの考えは誤りだ。

①の主張は問題から目をそらす詭弁です。ドル高のためにウォン安が進んでいるのは事実です。しかし、ウォンが売られるほどに流動性や信用度が落ちる可能性が高まるのも事実なのです。

②も強引な議論です。通貨危機が起こるかは、外貨準備の規模そのものよりも、それと負債の兼ね合いで決まることが多いのです。

③も論点のすり替えです。韓国の問題は通貨安ではなく、通貨安が引き起こすであろう通貨危機にあるのです。スワップと通貨安の関係を議論しても意味はない。

 韓国銀行総裁が理屈に合わない苦しい弁解を始めた――。これこそが、通貨危機の可能性が増していることを示していると思うのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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