「日本がここまでロシア嫌いの社会になるとは」 ロシア好きライター・山口ミルコが明かす複雑な心境
おどろきはしなかったものの…
『バブル』『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』などの著書がある、元編集者でフリーライターの山口ミルコさん。自身の名前のルーツをロシア語に持ち、この10年の間にロシアの地を幾度も踏んだという彼女は、今日の世界をどう見るのか。
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もうロシアへ行けないとなって、私は落胆した。もともと行きやすい国ではないのだが、この10年で、私はロシアのあちこちを旅している。
2014年のクリミア併合があったころも私はロシアにいて、現地の友人から聞いていた。
「ドネツクやルガンスクも、やがてそうなりますよ」
だから今回の侵攻に胸を痛めつつ、おどろきはしなかったものの、日本がここまでロシア嫌いの社会になるとは思っていなかった。
「あんたも名前を変えたほうがいいんやない?」
ロシア語表記が街から消え、報道における地名はロシア語読みからウクライナ語読みに。そうした流れに、私はついていけていない。
「キエフはキエフだし、チェルノブイリはチェルノブイリだよー」
自分の名前だって、ロシア語からきている。ミルコのミルは平和のミール(МИР)。かつて総合商社でソ連材の仕事をしていた父が名付けた。
ミール・ミールで「世界に平和を」。
この変わった名前のおかげでからかわれたり、呼びまちがえられたり、いろんな目に遭ってきた。子ども時代、ソ連は「怖い国」と思われてもいた。大人になったら得することもあったけれど、ここへ来て再びこの事態。ロシアがらみの企画は流れ、めっきり元気をなくした私は友人知人に今後を心配されている。
「あんたも名前を変えたほうがいいんやない?」
たしかに。名前に込められた意味と現状に乖離がありすぎる。
ミールのミルコとして生きて四半世紀経ったころの冷戦終結をへて、米ロは幾度かリセットを試みてきた。2010年代には「いよいよ日ロ平和条約か?」と期待されたこともあったというのに。
世界平和は幻だった?
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