昨年5月に比べ12倍!欧州で天然ガス価格高騰のウラ 原油、石炭への“逆流現象”も

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原油や石炭への「逆流」現象

 天然ガスはつい最近まで原油に比べて割安価格で取引されてきた。液体である原油は大型タンカーで手軽に運べるのに対し、気体である天然ガスの輸送にはパイプラインを敷設したり、LNG(液化天然ガス)に転換したりするための大型設備が必要だからだ。利便性の点からデイスカウント販売されてきた天然ガスだったが、ロシアによるウクライナ侵攻で事態は一変、「高値の花」になってしまった感が強い。

 低価格も追い風となって天然ガスの需要はこれまで順調に拡大してきたが、国際エネルギー機関(IEA)は8月上旬「今年の世界の天然ガス需要は前年に比べて0.5%減少し、その後3年間も低調な伸びにとどまる」との見通しを示した。IEAは「世界的な天然ガスの価格高騰で石炭や原油から天然ガスへの切り替えが進まなくなっている」としている。

 そればかりか、天然ガスから原油や石炭への「逆流」現象も起きている。天然ガスが「高値の花」になってしまったがために、発展途上国ばかりか先進国でも天然ガスに代わる燃料の需要(代替需要)が生じているのだ。

 IEAは8月中旬、今年と来年の世界の石油需要を上方修正した。今年の需要は前年比2.2%増の日量9970万バレル、来年の需要は2.1%増の1億181万バレルだ。上方修正の要因は代替需要の広がりだ。天然ガスと電力の価格が高騰し、一部の国で天然ガスから石油への切り替えを促しており、顕著なのは欧州と中東だ。IEAは「高温による冷房需要の高まりで発電用燃料としての石油需要が伸びる」と想定している。

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