技能実習制度のベトナム人はそんなにヤバいのか 実務経験者が語る「反社とのリアルな関係」

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失踪の原因はスマホ

 そうなれば監理団体も受け入れ先企業も咎め立てを受けることとなり、最悪の場合、実習生の斡旋や受け入れができなくなる。

 日本人労働者から忌避されて「人手不足」になっている実習生の受け入れ企業にとっては、即死活問題となるため、寮や借り上げの社宅については、企業の担当者がもの凄く気を遣うポイントだ。

 監理団体の担当者のほうも、住まい関連について実習計画にいい加減な記載や曖昧な記述をすれば、所管の役所の前に、まず上司からオーケーが出ないので、普通に技能実習制度、技能実習生と向き合っていれば、タコ部屋云々はとても考えられることではない。

 さて、失踪した技能実習生である。

 あらすじを言っておけば、まずは職場で同僚や日本人従業員との関係がこじれ、遅刻や無断欠勤が急増。1度目の脱走をし、ほどなく会社関係者によって確保され、勤務先に2度としないと一筆を入れた。

 しかし、しばらくして2度目の脱走をする。今度はしばらく連絡が取れなかったが、本人自ら監理団体へ連絡を入れて救助を要請した。

 そこで、監理団体の代表者と担当者が迎えに行き、経緯と行動を聞き出したところ、驚くべき真相が明らかとなった。

 そもそも、職場での人間関係がこじれたきっかけはスマホだった。

ネットカジノで破滅

 建築土木関係の仕事に従事していたのだが、来日前に想像していたよりも体力的にきつく、現場での強い口調での指示や助言にも反発を感じていたという。

 そのうち、仕事や生活の連絡用にと会社から渡されたスマートフォンを使って、ゲームやネットカジノにのめり込むようになる。

 スマホゲームは、一緒に現場にいた日本人がやっていたのを見て覚えた。ネットカジノは、先に来日していた実習生の先輩がやっていて教えられたそうだ。

 最初は肉体的な疲れに慣れなかったこともあり、ゲームも仕事の隙間時間にする程度だった。本国の家族への連絡は、寮のWi-Fiを利用して通信アプリでしていたから、通信料金もさほど負担にはならなかったという。

 ところが、寝坊して現場への出発に遅刻したある日、ふてくされて寮へ戻り、そこで一日中ゲームをしてから様相が一変した。次第に寝る間も惜しんでゲームに熱中し、休日には徹夜でゲームをやるようになる。

 給与をゲームの課金に使い、家族への仕送りにも手をつけ、ついには同僚から借金をしてしまった。

 勤務態度が目に見えて悪くなったところへ加えて、同僚への借金の返済が滞るようになり、とうとう掴み合いの喧嘩をやらかす。

闇金に連絡

 足りない金を増やそうと、手を出したのがネットカジノだった。やり始めにさまざまなボーナスや特典があったことで夢中になり、次のボーナスまで、その次の特典までと、前のめりになって抜け出せなくなり、気づけば金を貸してくれる同僚や同胞さえもいなくなっていた。

 そこで手を出したのが、いわゆる闇金である。

 直接会って借りたり返したりするのは同じ国から来日していた男だが、その背後には日本のヤクザがいると聞かされ、「ヤバいかも」と思う気持ちはなくもなかったという。その男とて、バックレを予防するために、わざわざヤクザの存在を匂わせた面はあったに違いない。

 だが、まだ二十歳そこそこで、金利の何たるかもよくわかっていない。わかっているのは背に腹は代えられないということだけだ。

 とにかく小金を手にし、課金ゲームやネットカジノで遊び、上手くいってもいかなくても、買っても負けても、アダルト動画を見て寝落ちするようになった。

 著作権を侵害する違法動画アップロードサイトは、かなりの数が摘発されて淘汰されたものの、現在でも複数が存在している。多くは中国語メインだが、投稿されている動画のなかには東南アジア系の言語でタイトルや内容が記載されているものが散見される。

2回目の脱走

 なかには、日本のアダルト動画にわざわざ各国語での字幕を付けているものまであり、在日外国人が余暇として楽しんでいる様子が見て取れる。

 違法アップロードサイトのなかで日本のアダルト動画は、「JAV(Japanese Adult Video)」として1つのカテゴリーを形成するほどに人気がある。英語、中国語、ロシア語など、どの言語をメインとするサイトでも、必ずJAVというカテゴリーがあるほどだ。

 この実習生も例外ではなかったわけだが、アダルト動画を寮内で見ていたことが会社に知れてしまい、ますます居づらくなったことで、ついには財布やパスポートなど最低限の物だけを持って2回目の脱走をした。

 2回目の脱走についても、監理団体の代表と担当者による本人への聞き取りから、おおよその経緯がわかっている。

 脱走した実習生は、借りていた闇金の窓口だった同国人のもとへ行き、「2回目の脱走なので斡旋先企業には戻れず、もう日本にもいられないかもしれない」と相談を持ちかけた。すると、「もっと良い仕事を紹介してやるから安心しろ」と肩を叩かれ、日本人の元へと連れて行かれたという。

 その日本人にパスポートから在留資格証からすべて取り上げられ、畳2枚ほどしかないベニアで仕切られただけのタコ部屋に押し込まれ、翌朝から働かされることとなる。

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