技能実習制度のベトナム人はそんなにヤバいのか 実務経験者が語る「反社とのリアルな関係」

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厳しい審査

 賃金に関しては、実習生を受け入れる段階で、受け入れ先企業がある都道府県の最低賃金、および同等の職能を持つ日本人従業員へ支払った、あるいは支払っている実績を調べ、少なくとも遜色のないように記載しなければならない。

 それらより1円でも安い賃金で受け入れるという実習計画を作成すれば、書類をすぐさま所管する省庁の窓口から突き返されてしまう。

 提出時だけ日本人と同等にして実際には安く払うというのも、受け入れ先企業の賃金台帳のコピーを月次で監理団体が保管し、必要に応じて開示しなければならないため不可能だ。

 たまにあるのだが、家族経営の企業では賃金台帳に抜けがあったり、曖昧に書かれた日があったりする。忙しさにかまけて記載そのものを忘れた、天候や機材搬入等の理由で急遽作業が取り止めになったのを忘れて適当に書いた、だいたいはそういう理由である。

 曖昧な記述や怪しい点があれば、監理団体の担当者が直接確認して理由を質し、正確に書き直してもらう。そうしなければ、監理団体が監査の時に減点されてしまうからだ。

 このように、賃金の支払いについては額の決定から支払い状況に至るまで、逐次の詳細なチェックが求められており、監理団体も受け入れ企業も、そこはごまかしが効かない。

コロナ禍の影響

 日本人労働者よりも低い賃金で働かされている実習生(実態としては「元実習生」になるが)がいるとなれば、斡旋元も含めて例外なくモグリである。つまり、外国人技能実習制度ではなく、制度の裏をかいて悪用する存在こそが問題なのだ。

 さて、現場の支援やサポートを担当するのは、やはりベトナム人、中国人が主体で10人ほど。日本人の現場担当は筆者を含めて3人である。

 コロナ禍以前は、斡旋先企業への巡回や不定期の商談、トラブルシューティングで出回ることが頻繁にあり、かなりバタバタしていたと聞いたものの、筆者が入った時にはリモートに加えて電話、メールでのやり取りがメインとなっていた。

 巡回や商談で相手先へ訪問すれば、その足で実習生とコミュニケーションを図ることも、直接注意を促すこともできた。

 だが、同じ国の出身で、同じ言葉を話す監理団体の担当者との対面機会が事実上なくなったことで実習生のタガが緩み、これまでにはなかったトラブルが発生するようになる。

エスカレートした「イジメ」

 まずは「言い方、話し方」である。

 実習生が作業実習しているのは、工事、工場、田畑、介護、いずれにせよ現業部門である。危険はもとより、手順や動き方に慎重さや丁寧さが求められることがほとんどであるから、その時その場での指示に、いちいち優しい言い方、話し方はしていられない。場合によっては、職人言葉や方言を使った強い口調での言い方、話し方となることもある。

 ところが、特に現場へ入ったばかりの実習生は、それを常に叱られていると受け止めてしまう。それは言われた本人だけでなく、同じ場にいる実習生の同僚も叱られているのだと受け取る。

 それで本人のやる気が削がれるばかりか、同僚の実習生からのイジメに発展するケースも珍しくない。能力の劣った邪魔者として、日々のうさ晴らしの標的となってしまうのだ。

 職場イジメは、日本でも教員室で教師同士によって行われるぐらいだから、どこでも普通にありえることだ。

 ただ、実習生についていえば、母国が異なるのはもとより、国が同じでも出身地が違えば気風や気質にも違いがある。出身国や近隣国の事情を知っていて、仲を取り持つ監理団体の担当者が頻繁に来るとわかっていれば激化せずとも済んだことでも、まず来ないとなるとイジメやケンカはエスカレートしやすい。

実習生の住環境

 今日も明日も、現場も同じ、寮も同じ(または至近距離)となれば、関係性は幾何級数的に悪化してしまう。

 実際、このイジメが原因となって実習の意欲を失い、生活が乱れたあげくに居場所をなくし、失踪してしまった実習生のケースがあった。筆者が所属した監理団体が斡旋した実習生である。

 先に、実習生の住環境について書いておきたい。

 実習生が住む寮についても、1人あたりのスペース、備品、火災保険の規定など事細かな規定があり、正確に記載報告しておかなければならない。

 実習生がタコ部屋に押し込められている、といった記事を見かけることもあるが、技能実習制度のなかでは考えられないことで、技能実習生と単なる外国人労働者との混同や曲解があるのではないだろうか。

 外国人が夜中に騒いで通報された、といった報道がなされるのを目にした人もいるだろう。逆にいえば、地域でもそれほど目立つ存在がゆえに、技能実習生を受け入れているのだとすれば、規定を守っていないことがすぐに関係官庁にバレてしまう。

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