統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか
捜査終結
東京地裁で初公判が開かれたのは09年9月10日。既に政権交代は実現しており、同月16日から鳩山由紀夫氏(75)を首相とする内閣がスタートする予定になっていた。
「検察側は冒頭陳述で、霊感商法は統一協会の宗教活動であり、最終目的は信者にして全財産を献金させることだと指摘しました。全国弁連も評価するほど踏み込んだ内容で、関係者の間では、『この刑事裁判を足がかりに、統一教会本体に対する捜査が行われるかもしれない』と期待する声も出ました」
東京地裁は11月、『新世』の社長に懲役2年執行猶予4年、罰金300万円の判決を下した。
裁判長は、《信仰と混然一体となったマニュアルなどによって違法な印鑑販売の手法を販売員に周知させていた》、《相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環》などと厳しく指弾した(註2)。
霊感商法を特定商取引法違反で摘発した刑事事件で、統一教会との関連性を認定した初めての判決となった。警察や検察だけでなく裁判所も、統一教会の反社会的活動を強く問題視したことが分かる。
統一教会は控訴せず、判決が確定した。だが、その後、捜査の手が先に伸びることはなかった。
政治家の介入
統一教会の本部に家宅捜索が入ったり、教団の日本人や韓国人の幹部が取り調べられたりすることもなかった。
「歴史にイフがない」と言われることは分かっていても、もしあの時、統一教会の幹部に捜査のメスが入れば──と考えてしまう人は少なくないだろう。
当時の捜査をよく知る全国弁連の山口広弁護士は、「現在の観点から、警視庁の捜査に対し様々な意見が出るのはもちろん理解できます」と言う。
「しかし、捜査を間近に見ていた人間としては、警視庁の捜査に驚いたことも事実です。極秘資料が家宅捜索で見つかり、統一教会が霊感商法の指揮を執っていたことが白日の下に晒されました。東京地裁の判決も、統一教会を断罪する厳しい内容でした。捜査機関や裁判所が本気になれば、これほどの成果が上がるのだと実感したものです」
だが、それ以上は捜査が進まなかった。山口弁護士によると、複数の要因があるという。
「民主党政権下とはいえ、やはり警察に顔が利く政治家の介入はありました。こういう場合、世論のバックアップが鍵になります。マスコミは捜査を大きく報じましたが、率直に言って、世論の反応は鈍かったと思います。2000年代は『統一教会は過去のもの』と考えている人も少なくなかったのです」
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