統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか

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信者獲得の手段

 そして同年6月、“本丸”である警視庁が動く。警視庁公安部は11日、東京都渋谷区の印鑑販売会社「新世」の社長ら7人を、特定商取引法違反の容疑で逮捕した。

 朝日新聞は同日の夕刊に「不安あおり印鑑販売容疑 統一教会関与か 社長ら逮捕」の記事を掲載した。

 この記事によると、容疑者らは渋谷駅前で勧誘した女性5人に姓名鑑定を受けさせ、「先祖の因縁が家族に出ている。このままでは家族が不幸になる」などと不安を煽り、最終的に1本16〜40万円の印鑑13本(被害総額416万円)を売りつけたという。

 他にも、警視庁公安部の捜査結果として、「新世」の売上が2000年から09年までの間で約6億7000万円に達したという驚きの金額を伝えている。これが全て統一教会の“富”となったのだ。

「『新世』は霊感商法で巨額の利益を得ていただけでなく、信者獲得の手段としても霊感商法を利用していたことが判明しました。家宅捜索で信者獲得のためのマニュアルが押収されたのです。印鑑の購入者を『ビデオフォーラム』と呼ばれる統一教会への勧誘施設に連れて行き、教義を教えるビデオを見せたりしていました」(同・記者)

会長交代

 女性販売員の信者5人が各100万円の罰金、社長ともう1人が起訴された。全員が統一教会の信者であることを認めたという。

 更に同年7月、朝日新聞が「給与名目で信者へ数千万円振り込み 統一教会にう回献金か 印鑑商法事件」のスクープ記事を報じた。

「記事は、『新世』が約100人の信者に給与名目で年7000万円を払っていたという内容でした。うち約70人は、会社での勤務実態はなかったそうです。100人の信者は名目上の給与を受け取ると、全額を統一教会に寄付して献金していました。朝日新聞の報道により、『新世』と統一教会が不可分な関係であることが浮き彫りになったわけです」(同・記者)

 朝日新聞の記事が出てしばらくすると、日本統一教の会長が辞任を発表した。『新世』と統一教会との関係は認めなかったが、信者の関与を謝罪した。

「当時、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の調査で、日本統一教会の実権は韓国人幹部が握っていることが分かっていました。日本人会長の交代は、いわば“トカゲの尻尾切り”でしかなかったのです。後継の会長は国際勝共連合の理事長を長く務め、政界に深い人脈を持っていることで知られていました。危機感を覚えた統一教会が新会長の政治力に期待したことがよく分かります」(同・記者)

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