純粋か鈍感か? 批判続出の「ちむどんどん」 愛される朝ドラヒロイン像に変化あり?
1話15分で120話を引っ張るのは無理? 「タイパ」至上時代に向かない「悪気はないんだけど直情型」ヒロイン
朝ドラのフォーマットは1話15分で全120~150話。最後まで視聴者を引っ張るのに必要なのは、ワクワクというよりはザワザワ、つまり「これからどうなるの?」という不安が肝ではないだろうか。だから戦争や震災を縦軸にした朝ドラはヒットする。「あまちゃん」「ごちそうさん」「とと姉ちゃん」「エール」……。そして、横軸に描かれる人間模様には、ダメ男の存在や父親の死・別れもつきものだ。ヒロインの強さや前向きさは、避けられない大災害や、頼れる相手のいない不遇な環境によって強調されるという図式。特にいたいけな子役は同情を誘う。だからヒロインが幸せになるまで応援したくなるという展開が、今までの成功戦略だったと思うのだ。
でも物静かで暗いヒロインを、朝から見たい人はそういない。だから芯の強さや能天気さ、あるいは勝気さが前に出る主人公というのが、暗黙の条件にもなっていた。
しかし今はタイムパフォーマンス至上時代、令和である。「無神経に見えるけど実はいい子」とわかるまで待つなんて時間のムダ。一度ダメだと決めたらもう会わない。そんな視聴者も増えたのではないだろうか。若者に整形がはやるのも、初対面で「ナシ」にされたら、性格を知ってもらう段階まで進めないことをよくわかっているからだろう。美人は性格もいい、以上。そういう単純で残酷な判断軸が浸透している。
だからNHKは保険をかけ始めた。オーディションではなく実力と人気のある女優に打診することで、一定の好感度を保つという保険だ。全120話の縛りゆえにヒロインの造形を変えられないなら、女優パワーに頼るしかない。「ごちそうさん」の杏さん、「スカーレット」の戸田恵梨香さん、「なつぞら」の広瀬すずさん。直近では「カムカムエヴリバディ」の深津絵里さん。「ちむどんどん」の黒島さんも、悪くないキャスティングだ。ただフレッシュさはあるものの、前述の女優陣に比べると知名度はやや劣る。それもまた、批判されやすい状況を作っているのかもしれない。
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