「酒を飲むと豹変」 シンガーソングライター・山崎あおいが語る、“東京”を教えてくれた友達

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めちゃくちゃな人が許容されてしまう東京

 お酒の入ったTちゃんは、そんな感じでまさに「めちゃくちゃ」だった。別の友人の口に、ゆで卵を殻付きのまま押しこんだり、私の新曲を面と向かって「クソダサい」と罵ったりした。翌朝には「記憶にない」と言いながらも、申し訳なさそうに必ず前日の言動をわびてきた。

 こんなにめちゃくちゃな人が周囲から許されている、そしてつい自分も許してしまうのは、ここが東京だからだと、当時の私は思った。全ての道は母に通ずる、狭い地元。そこでは友人たちも私も、なるべくうわさにならない生活を心がけていた気がする。

 いまとなっては、世の中にはTちゃんのような酒乱もいるのだとわかるけれど、彼女が作り出した混沌の数々が、私の中の「東京」を180度以上変えたことは間違いない。

 東京は、架空の都市ではなくなった。Tちゃんだけではない、無数のめちゃくちゃを物ともせずに包み込む、あたたかい、巨大な街だ。

「夢の国」は千葉県にあった。しかし私はまだ、ファッション誌で見た「裏原」の文字がどのエリアを指すのか知らない。

山崎あおい
1993年札幌生まれ。シンガーソングライター。2012年メジャーデビュー。現在は東京を拠点に活動中。

デイリー新潮編集部

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