イチロー、武豊、蜷川幸雄… 水谷豊が明かす“華やかすぎる”交友録と“秘話”

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加山に称賛され「天にも昇る気持ち」

 中でも、近年、水谷と共演が多い女優が、檀れい(51)である。

 テレビ朝日系「無用庵隠居修行」(17~22年)では水谷の相手役を務め、水谷が監督をした映画「太陽とボレロ」(22年)では主役を演じた。

「先に挙げた方々のように、宝塚のトップを務めるのは並大抵のことではないでしょうが、檀れいさんも、やはりいろいろなものが備わっている女優さんですね。人への気遣い、品性、華やかさ。そして何より、せりふに血を通わせることができる。檀さんが魅力的なのは、役に命を宿らせることができるからだと思います」

 最後に、水谷が「憧れの人」と呼ぶ加山雄三(85)について尋ねた。

「中学生から今に至るまで、憧れ続けている方です。当時の映画館は2本立てで、入れ替えなし。加山さんの若大将を観て、併映の映画を観て、もう一度若大将を観る。映画館を出るときは、加山さんの歌を口ずさみながらです」

 加山の息子で俳優の加山徹(47)とは、「相棒」や他の作品でも共演しており、付き合いがある。だが、憧れの人との対面は格別だった。

「初めてお会いしたときに『おっ、杉下警部、相棒、面白いねぇ』と言ってくださったんです。まさに天にも昇る気持ちでした。そのときからのご縁で、加山さんの芸能生活55周年記念の音楽イベントにも、出演させていただきました」

ドキドキしながら写真を

 水谷が加山のステージに招かれたのは16年のことだった。

「ゲストには、さだまさしさん、鈴木雅之さん、南こうせつさんなど錚々たる歌手の皆さんがいて、僕も歌わせていただいたんです。加山さんのショーの他に、それぞれが持ち歌を歌って、最後に加山さんとデュエットするという演出でした」

 水谷も、持ち歌の「カリフォルニア・コネクション」を披露した。

「加山さんとは『お嫁においで』をデュエットさせていただきました。夢がかなうといいますが、感覚的には体が震えてしまうような、もっとすごいことが起きた時間でした。あの加山雄三さんが僕の傍にいて、一緒に歌っているのですから」

 加山は19年から20年にかけて、脳梗塞や小脳出血を発症。一時は平衡感覚がおかしくなり、言語障害も起きたが、日々のリハビリで復帰した。

「去年(21年)、息子の徹ちゃんの舞台を観に行ったとき、なんと加山さんご夫妻もいらしていたんです。病気から立ち直った加山さんに会えたことや、ドキドキしながら一緒に写真を撮っていただいたことなど、本当に嬉しい日でした」

 水谷は、銀幕のスターに夢中な少年のように、加山について語った。

 多くの人に囲まれ、文字通り「笑って過ごす」人生を送ってきたかに映る。だが彼が、屈折と挫折の季節を過ごしていたことはあまり知られていない。

(以下次回)

水谷 豊(みずたにゆたか)
俳優。1952年生まれ。「傷だらけの天使」「熱中時代」など多くの人気ドラマに出演。「相棒」では20年以上にわたり杉下右京役を演じ続けている。6月に公開された「太陽とボレロ」など、映画監督としてもこれまで3作品を発表。89年に元キャンディーズの伊藤蘭と結婚。長女の趣里も女優として活躍している。

松田美智子(まつだみちこ)
作家。1949年生まれ。フィクション、ノンフィクションともに多くの作品を手掛けてきた。小説に『天国のスープ』、ノンフィクション作品に『越境者 松田優作』『仁義なき戦い 菅原文太伝』などがある。

週刊新潮 2022年8月25日号掲載

独占告白!「『水谷豊』初の語り下ろし自伝」より

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