イチロー、武豊、蜷川幸雄… 水谷豊が明かす“華やかすぎる”交友録と“秘話”
「狂気のような面白さ」
映画が全盛の時代を経験している俳優といえば、長門裕之(11年没・享年77)と津川雅彦(18年没・享年78)の兄弟がいる。ともに水谷とは50年近くの付き合いだった。
「長門さんとは、16歳の頃にお会いしているんです。僕が主演した『バンパイヤ』(フジテレビ系・68年)という番組を制作していた虫プロが倒産したあと、制作を受け継いだのが長門さんの人間プロ。それで長門さんに誘われて、ご自宅へ遊びに行ったんですね。(妻の)南田洋子さんもいらして、歓迎してくれました」
津川と会ったのは、少しあとだった。
「それから何年かして、僕は京塚昌子さんが主演の『肝っ玉捕物帳』(フジテレビ系・73~74年)という時代劇に出演したんです。郷ひろみさんとか、朝丘雪路さん、左とん平さんも出ていた。そのとき津川さんも出演していて『時代劇だから、眉毛をきれいにしてあげる』と言って、はさみで眉を整えてくれたんです。いつ会っても優しくてね。ご兄弟には、本当によくしていただきました」
それから幾星霜。水谷と兄弟は「相棒」で共演する。長門は、自分を閣下と呼ばせる傲岸不遜、狡猾な元外務省事務次官役で、津川は対照的に人情味溢れる元法務大臣の役である。
「長門さんの役は本当に悪い奴なんだけど、とにかくその芝居が面白くてね。撮影中だから笑ってはいけないのに、どうにもならないんですよ。狂気のような面白さだった」
長門の出演回数は2回だが、津川は13回に及ぶ。
「長門さんも津川さんも、僕が杉下右京というキャラクターを作ったことをすごく褒めてくれた。10代の頃から僕を見ているので『よくやったね』と」
宝塚トップスターの共通点
水谷は宝塚出身の女優たちとも縁が深い。宝塚は華やかな世界に思えるが、厳格な規律に縛られ、先輩後輩の序列を叩き込まれる。
「古い順で言えば、昔同じ事務所に所属していた浜木綿子さん。『浅見光彦』シリーズ(日本テレビ系・87~90年)で僕の母親役だった乙羽信子さん。そのシリーズにゲスト出演した黒木瞳さん。『気分は名探偵』(日本テレビ系・84~85年)でも共演した朝丘雪路さん。『相棒』シリーズには真飛聖さん、大地真央さん、檀れいさんにも出演していただいています」
全員が宝塚の元トップクラスであり、引退したあと映像の世界に移っても、一線で活躍している。水谷は「彼女たちには共通点がある」と語る。
「皆さん、役に強い愛情を持って演じている。それぞれに自分の世界があり、只者ではありません。もっとも、そうでなければ生き残れない世界ですが」
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