イチロー、武豊、蜷川幸雄… 水谷豊が明かす“華やかすぎる”交友録と“秘話”

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「水谷豊はいい俳優です」と褒めてくれた

 以後は蜷川の舞台をなんどか観劇し、交友が続いた。

「蜷川さんの舞台には色気と華があって、素晴らしいなぁ、といつも思って観ていました。蜷川さんからは『今度やろうよ、豊。舞台を一緒にやろう』と誘われたんですけど、かなわぬうちに逝ってしまった」

 稽古中に灰皿が飛んでくるなど、厳しい演出で知られる蜷川だが、彼の優しさを知っている水谷には、それが信じられないという。

「蜷川さんには感謝していることがあるんです。娘(女優の趣里)は幼稚園から中学まで桐朋学園に通っていたんですね。それで蜷川さんが桐朋学園芸術短期大学の学長だった頃、俳優について講義したときに、『水谷豊はいい俳優です』と褒めてくれたんです」

 その言葉は巡り巡って、趣里の耳に届いた。

「娘が聞いたら、僕の株が上がるじゃないですか(笑)。恥ずかしいけど『蜷川さん、ありがとう』とお礼を言いたかった。娘が思春期で、ちょっと父親の株を上げたいときだったので尚更ね」

岸惠子からの拍手

 岸惠子(90)もまた、出会いから数十年が経って再会した相手である。

「相棒」シーズン7・第15話「密愛」で岸は、右京が慕っていた大学時代の恩師を演じた。

「岸さんとは『赤い激流』(TBS系・77年)で初めて共演させていただきました。僕が25歳の頃で、それ以来ですね。タイトルが『密愛』でも、僕が相手ではありませんでしたが(笑)」

 岸の役はフランス文学の翻訳家で、一緒に暮らしていた使用人の男が密室で死んでいたため、右京に謎解きを依頼する。

「岸さんは、教え子の右京に対しての振る舞いと、犯罪者として右京と対峙するときの演じ分けがとても見事で、感動的でした。映画が全盛の時代を経験している方は本当に存在感が大きいというか。そこにいるだけで説得力がある」

 右京は見事密室の謎を解き明かすが、それは恩師の罪を暴くことでもあった。

「僕は、先生は自分を捕まえてほしくて右京を呼んだ、と思っていましたね。右京は罪を犯した先生を逮捕しなくてはいけない。でも、いろいろな事情を考えると、彼女を強く責めることはできないと考えて演りました」

 右京の謎解きの長ぜりふが終わったあと、岸は拍手をしてくれたという。

「『今の芝居、簡単じゃないわよねぇ』と言ってくださって。とても嬉しかったですね。なにもかもがさすが、岸惠子さんでした」

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