国を滅ぼすアホ校則 筆者が過ごしたアメリカの中学・高校の校則事情は(中川淳一郎)

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 初めて「ワイドナショー」(フジテレビ系)を見ました。さまざまなテーマについて論客が意見を言い合う番組ですが、「ジェンダーレススクール水着」に関するコーナーでは、学校の無駄な校則が話題に上りました。出演者の三浦瑠麗さんは「ブルマを強要してくる日本社会と学校が憎かった。走る時にはパンツが出ていないかが気になった」的なことを言います。フランスで少年時代を過ごした出演者は「フランスで恰好は自由」と言います。

 そうなんですよ。日本の校則って意味が分からないのが多いです。私は中学2年から高校卒業までアメリカの公立に行きましたが、校則には「銃刀類・違法薬物の持ち込み禁止」「授業中、教室外に出たらその日の放課後は拘束」「ケンカ禁止」がありました。

 他には「ビール・タバコのロゴが描かれた洋服の着用禁止、着ていた場合は裏返す」も。そして「自慰行為禁止」もあったのですが、授業と授業の間の数分間で毎度便所で自慰をする男子生徒がバレ、停学処分をくらうも、母親が「ウチの子は自慰をしないと死ぬ!」と抗議をし、この生徒だけ特例で許されました。

 しかし、よく分からないのが、喫煙が黙認されていたこと。不良の象徴たるヘビメタのTシャツを着てロン毛の男子生徒が、体育館の前(「裏」じゃない!)でタバコを吸っていても何も言われない。

 これ以外の校則はほとんどありません。学校行事さえない。参加した行事は中学卒業時の遠足と、高校の卒業式のみ。ダンスパーティーの「ホームカミングダンス」「プロム」はありましたが、モテない私は相手がおらず参加せず。他にもアメフトやバスケ部の試合を皆で応援する文化はありましたが、運動会・学芸会・文化祭・林間学校・キャンプファイヤー・合唱コンクール等はありませんでした。

 冒頭の「ワイドナショー」ですが、体育着や上履きの学校指定によって、地元のはやってなさそうなスポーツ店が存続できている点についても言及され、出演者は「利権のにおいを感じる」的なことを言っていました。

 そうです。アメリカでは私立はさておき、公立では制服も運動着も赤白帽も上履きも「指定」のものは一切ありませんでした。各人が好き放題な恰好をしていたのです。ランドセルも強要ではありません。それを経験しているから、私は校則の多くは無駄だと思います。「ボールペンの使用禁止」とか「前髪は眉毛の上まで」とか一体なんなんですか?

 昨年、某県の男子高校生から聞いたのですが、「ツーブロック(トップは長めでサイドの毛を刈る髪型)禁止」があるそうです。それ以上に仰天したのが、「女子はうなじを出さない、白の下着以外は禁止」という県の教育委員会が作ったルールです。理由は「男子生徒を無駄に欲情させる」。

 この高校生は、お笑いコンビ・EXITのピンク色の髪の毛の兼近さんが好きで、自分も髪の毛をピンクにしていました。ただ、リモート授業では「黒髪以外禁止」だったので、PCのカメラで映る部分以外をピンクにするという用意周到ぶり。これには「よくやった!」と言いました。アホ校則、日本を滅ぼしますよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年8月25日号掲載

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