3.1兆円赤字のソフトバンク、株価急騰の理由は 専門家は爆発的な投資に「さすがに限界」
1981年、福岡市内でソフトバンクグループの前身となる会社を創業した孫正義氏は、2人の社員を前に「いつか、売り上げも利益も1兆(丁)、2兆(丁)と豆腐屋のように数えられる会社にしたい」と抱負を語ってみせた。呆れた社員たちはさっさと退社してしまったが、それから40年余りの8月8日、孫氏が発表した第1四半期の業績は何と3兆1600億円もの赤字だったのである。2期前の決算では4兆9千億円と日本史上最高の黒字を記録していたのに、この落差はどうしたことか。
経済部のデスクが言う。
「今回の赤字の主な原因は、同社が大株主である中国のEC大手・アリババの株価が大幅に下落したこと。そしてベンチャー企業に投資する『ビジョン・ファンド』が価値を大きく下げたことです。いつもは、得意げにITの未来を語ってみせる孫氏も、この日ばかりは顔色がさえませんでした」
決算説明会では徳川家康が戦で大敗した際に描かせた肖像画を掲げ、しきりに反省の弁を述べていた孫氏。
「3兆円ぐらいのマイナスは不思議ではない」
ところが同社の株価はいったん下げたものの、意外にも、翌週(8月15日)は急騰で始まったのである。
その背景を経済評論家の加谷珪一氏が説明する。
「ソフトバンクグループは携帯電話会社から投資会社に軸足を移しています。従って、会計制度の上では保有株式の値下がり分を赤字として計上しなくてはいけません。ご存じのように株価というものは1年で3~4割なら簡単に下がってしまう。同社は約20兆円の株を保有しているので、3兆円ぐらいのマイナスは不思議ではない。大半の投資家は、それを分かっているのです」
となれば、いずれは再び1兆、2兆と儲かるようになるのだろうか。が、加谷氏は首をかしげるのだ。
「ソフトバンクグループはすでに世界で400社以上のベンチャーに投資しています。しかし、有望な企業というものは、頻繁に登場するわけではありません。孫さんのように次々とベンチャーを見つけては大金を投じてゆくという手法は、さすがに限界に来ていると思います」
世界に先駆けてYahoo!に出資し、アリババを見出した孫氏。山のような赤字を撥ね返す日は来るのだろうか。