小銭がたまった中年の心をつかむドラマ「魔法のリノベ」 リフォームを考えている人はぜひ

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 昨年からリフォーム熱が高まり、トイレと台所をリフォームした。トイレの業者は選択を誤った。素性のしれない個人の業者で対応がいいかげんなうえに、完全にぼったくられた。アプリで業者を決めた私が悪い。なので、台所は身元の確かな大手業者に依頼。システムキッチンは高額な割に融通のきかないメーカーではなく、1cm単位で調整できる中堅メーカーの製品にした。担当者の女性はレスポンス迅速、職人の仕事ぶりも心地よく、数センチ単位の細かい要望もきっちり実現してくれた。リフォームしたくらいで人生は変わらないが、腰痛は軽減したような気がする。トイレ13万、キッチン60万。それでも変えたいところはまだある。

 そんなときに、リノベーションがテーマ、工務店を舞台にしたドラマが。思わず観ちゃうわけよ。「魔法のリノベ」の話である。

 主演は波瑠。大手リフォーム会社の営業エースだったが、恋愛絡みで後輩に足をすくわれ、退社に追い込まれた過去がある。その後、入社したのは家族経営の小さな工務店。ホームページもマスコットもちょいダサ、営業のワケあり長男(間宮祥太朗)はよく言えば人情派、悪く言えばポンコツ。わびる力だけは一人前。波瑠は教育係として、リノベーション営業の真髄を教えていく。この眼力強いコンビが個人宅のリノベーションを手掛けていくのだが、どの家もいろいろと難ありで、「それ、事前に話し合っておけや!」という案件ばかり。ま、そこで波瑠と間宮が最適なリノベを提案、夫婦や家族の問題までも解決に導くっつう話だ。

 この提案が割と大胆だし、金額も明示されるため、リフォームやリノベを考えている中年には興味深い。各局がなんとかして若者を取り込もうと苦心する中、振り切ったね、カンテレ。まんまとハマったよ、私。

 ちなみに、リノベ後の家と家族の様子はエンディングでさらっとまとめる。ミニチュアやCG、本物のビフォーアフター映像も織り交ぜてあるようで。ホントはそこもっと観たいんだけどな、と思うが、本編はあくまで提案・設計まで、ね。

 小さな工務店の憂いは少なめ、柔軟で穏和な依頼主に人情の職人。事故物件や風水信奉者など、そう容易には解決しないはずの案件も、都合よくふんわり優しく善意で包む。物足りなさは否めないが、その分、波瑠と間宮がいろいろと背負ってのスタートだった。

 波瑠は、退社の原因となった元彼(大企業では病みそうな金子大地)とその元カノ(被害者ヅラが最凶の北香那)にまとわりつかれて大迷惑だ。間宮は弟に妻を寝取られ、駆け落ちされた挙句、泣きつかれるという不幸に見舞われている。

 私が個人的に好きなシーンは、波瑠が友人(SUMIRE)と登山して愚痴を吐き出す場面。女友達がいない印象の強い波瑠に、親友がいてよかったと思う。あと、近藤芳正&本多力のコント劇場ね。薄くすべりながらも細かい芸。ふたりが出るCMを観て、三層窓にグッときた。思うつぼだよ。死んでも壺は買わんが。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年8月25日号掲載

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