日本は「中進国」に成り下がった? 給料を上げる“逆転の一手”とは?
11.5兆円が海外に流出
日銀の発表では、今年5月の輸入物価指数は前年同月比43.3%の増加で、81年以来、最大の伸び幅です。一方、輸出物価指数は同16.7%にとどまっています。この状況では輸出と輸入の差は開くばかりで、家計の所得などが国外へどんどん流れてしまいます。これはわかりやすく言い換えれば、日本の貧困化が進んでいる、ということです。
今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、年額換算で538.7兆円ですが、交易条件の悪化を加味して実質国内総所得(GDI)を計算すると、527.2兆円です。差額の11.5兆円が海外に流出してしまっています。
しかも、この交易条件の悪化は、昨今の円安による一時的なものではありません。何年にもわたって継続しており、そのことが一番の問題なのです。
すでに日本は「中進国」
繰り返しますが、日本は80年代まで輸出大国、輸出立国でした。ところが、貿易・サービス収支は2002年の6.5兆円の黒字から、21年には2.5兆円の赤字に転落しています。
そして21年度の輸入総額の内訳を見ると、原油8.2%、LNG5.0%、医薬品4.9%、半導体等電子部品4.0%、通信機3.9%。以前は日本が輸入するものは、エネルギーや原材料、食糧が大半でしたが、いまでは日本の得意分野だった半導体や通信機も、大量に輸入しています。かつて工業製品を売って稼いでいた日本は、いまやそれらを高値で買わなければならない輸入大国です。
「このままでは先進国ではなくなるぞ」と発破をかける人もいます。しかし、現実には、すでに日本は「中進国」に転落しているといえるでしょう。韓国にも所得で敗北し、いまの日本経済には、かつての繁栄の影もありません。
いまはまだ、なんとなく生活していけても、いつまでも「平和ボケ」していては、日本に未来はありません。しかし、この衰退傾向を逆転し、発展につなげる道が、ないわけではありません。実際、同様のどん底の状況を克服した例は世界に存在し、私たちはそこから多くのヒントを学びとることができます。
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