“スター不在”の甲子園決勝 仙台育英、“白河の関越え”への執念か、下関国際、大阪桐蔭を倒した勢いか
最大の武器は豊富な投手陣
第104回の「夏の甲子園」は、いよいよ8月21日に決勝戦を迎える。仙台育英(宮城)と下関国際(山口)、どちらが勝っても春夏通じて初優勝になる。大会前に、両校が決勝戦で激突することを予想していた人は少ない。いずれも今年の選抜出場を逃しており、その後に行われた春季大会は、仙台育英が東北大会の初戦で敗れ、下関国際は山口県大会の決勝で敗北している。共通点は、今夏に大きく実力をつけたところだ。果たして、甲子園の決勝で、どんな戦いを見せてくれたのだろうか。【西尾典文/野球ライター】
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まず、仙台育英の戦力を分析していこう。最大の武器は豊富な投手陣である。ここまでの4試合で、古川翼、斎藤蓉(いずれも3年)、高橋煌稀、仁田陽翔、湯田統真(いずれも2年)の5人が登板している。その全員が140キロを超えるスピードを誇り、レベルが高い左右の投手を揃えている。
準々決勝の愛工大名電戦は、斎藤と古川の2人で投げ切ったが、他の3試合は3人以上の投手が登板しており、継投に全く迷いが感じられない。球数を見ると、1試合に100球以上を投げた投手は1人もいない。最も球数が多い高橋ですら、トータルで10イング、143球にとどまっている。
準決勝で下関国際に敗れた、滋賀代表・近江のエース、山田陽翔が投球回数38回で644球を投げていることと比べると、仙台育英が多くの投手を上手く使い分けながら、勝ち進んできたのか、よくわかるだろう。
本塁打はないが、長打は4試合で13本
打撃面は、試合によってオーダーを入れ替えている。特定の主力選手が打って得点するというのではなく、あらゆる打順からチャンスを作って走者を還すことができる。各打者の成績をみると、12人の選手が打点をマークしており、背番号14の岩崎生弥(3年)がチーム2位の6打点を記録しているのが、象徴的だ。
これまでの試合で、ホームランは出ていないが、長打は4試合で13本も記録しており、長打力がないわけではない。盗塁やスクイズなどの足を使った攻撃が上手くいかない場面が目立つ点は、少し気がかりだが、投手、野手とも上手な選手起用で疲労が少なく、万全の状態で決勝戦に挑むことができる。これは、優勝への大きなプラス材料といえるだろう。
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