里見香奈は棋士編入試験“黒星スタート” 先輩の今泉健司・五段はどう見たか

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試験官の徳田は大役に「光栄」

 昼休憩での里見の「勝負飯」はきつねうどん。昼食後から本格的に駒がぶつかり、戦端の火蓋が切られた。徳田は銀2枚を中央に繰り出し、里見の飛車の攻撃を食い止める。

 最初、里見は早指しで時間の消費が少なかったが、途中から長考を交え、消費時間が多くなる。

 里見は盤のど真ん中の「5五」に角を繰り出したいが果たせない。徳田の落ち着いた指し回しで次第に劣勢になる。角を捨てて徳田の陣に飛車を打ち込んで攻撃するが、駒損も大きく続かない。徳田の127手目が「6七龍」。里見は畳の屑をごみ箱に入れたり、額に手を当てたりしていたが、残りの8分を使い切り、1分将棋に入って残り7秒、駒台に手をかざして投了した。

 里見は局後、勝負どころの一手について、「もう少し手がなかったかな」などと振り返った。別の局面でも「途中で気持ちが変わってしまって」と、当初の考えを貫くべきだったと反省しているような様子もみられた。

 試験官を務めた徳田は、「新人でこれだけ注目される対局は経験できない。光栄でした」と日本将棋連盟に感謝した。連盟では里見と同じ関西本部に属するが、2人は練習対局もなかった。いきなりの真剣勝負は徳田の完勝と言っていいが、「(相手に)もう1枚あれば危ない場面もあった。楽観し過ぎた」と振り返った。

 女性として初めて奨励会の三段に昇段した里見は、「三段リーグ」で四段、つまりプロ棋士を目指したが果たせず、2018年に26歳の年齢制限で強制退会となる。編入試験の受験資格は、棋士との直近の公式戦で「10勝以上」かつ「勝率6割5分以上」。里見は10勝4敗と文句なしの成績で受験資格を得た。若手の四段の試験官5人を相手に毎月1局ずつ闘い、3勝以上で合格だが、逆に3敗すれば不合格。里見は残る4局で3勝しなくてはならない。

 現行制度の編入試験では、2014年に今泉健司・五段(49)、2019年に折田翔吾・四段(32)が合格しており、里見は3人目の受験者だ。

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