里見香奈は棋士編入試験“黒星スタート” 先輩の今泉健司・五段はどう見たか
将棋の里見香奈・女流五冠(30)が女性初の棋士(プロのこと)を目指す「編入試験五番勝負」の第1局が、8月18日、大阪市の関西将棋会館で行われ、里見は黒星スタートとなった。この日の試験官は4月にプロ入りした徳田拳士・四段(24)。デビュー後の通算成績が12勝1敗と快進撃中で、日本将棋連盟の棋士番号が若い順に選任された新四段の試験官5人の中でも最も手ごわそうな相手だった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】
***
【写真】里見は、手にハンドクリームを塗り、水分補給のために3本もペットボトルを並べて対局に挑んだ
中継を見守る妹も緊張
完全生中継したAbema TVの解説は、編入試験合格第1号でサラリーマンから棋士に転じた瀬川晶司・六段、女流将棋の清水市代・女流七段、黒沢怜生・六段、さらに、里見の妹の川又咲紀・女流初段らが交代で進行した。
瀬川は「里見さんは挑戦権(受験資格)を獲得した時、すぐに(編入試験を)受けると言わなかったし、受けないのかと思っていた」と打ち明けた。姉の映像を心配そうに見守る川又は、中継の司会で緊張したのか、自己紹介で間違えて「わたくし、里見が」と旧姓で名乗ってしまうご愛敬。
白いスーツ姿で対局場に現れた里見は、午前10時の開始直前、手にハンドクリームを塗り、水分補給のために3本もペットボトルを並べた。
持ち時間は各3時間。「振り駒」で里見は後手になり、得意の中飛車で玉を「美濃囲い」で固め、居飛車の徳田に挑んだ。
一方、木村義雄、大山康晴、中原誠、谷川浩司と、歴代永世名人の掛け軸を背にした上座に徳田が座る。関西将棋会館で最も格式のあるこの部屋でルーキー棋士が上座に座るのは異例だ。藤井聡太・五冠は別として、ルーキーがこんなに注目されることも珍しい。
瀬川は「里見さんはもう歴戦の人。むしろ徳田さんが緊張しているのでは」と話したが、いきなり注目される試験官も大変だ。
最初、里見の背後は広く開いていたが、途中から衾(ふすま)が閉められ、狭い空間に2人が対峙した。それが窮屈だったのではないのだろうが、里見は時折、席を外して気分転換を図っていたように見えた。
島根県出身の里見は、鋭い攻撃から「出雲のイナズマ」と呼ばれる。一方、徳田は山口県周南市出身で、ともに中国地方の出身だ。
[1/3ページ]