新型コロナ対策 緊急承認制度の運用に問題 「仏作って魂入れず」の指摘
制度の運用に疑問も
今回の承認見送りの判断に多くの医療関係者は妥当との見解を示しているが、制度の運用について疑問を投げかける専門家もいる(8月15日付47NEWS)。
小野俊介東京大学准教授(医薬品評価科学)は「今回の審査は通常の医薬品審査と同じ欠点を指摘する減点方式で進められ、制度を作った意義は感じられなかった。純粋な薬効評価の点数だけでなく、社会のニーズ(選択肢は1つでも多い方が良いとする臨床現場の医師の意向など)も勘案して承認すべきかどうか議論すべきだった」との見解を示している。小野氏はさらに「ウイルスを減らす効果は家庭内感染の抑制につながる可能性があり、こうした面から有効性を議論できた」との見解を示すなど、本制度の運用に当たっては「危機的な状況で必要な薬を一緒に作り出そうとする伴走者のような姿勢が求められている」と主張している。誠に正鵠を射た指摘であり、今回の承認見送りの判断は「仏作って魂入れず」とのそしりをまぬがれないだろう。
季節性インフルエンザの飲み薬の有効性は一般に考えられているほど高くはないが、「困ったときには飲み薬が手元にある」との安心感が人々のインフルエンザのリスク認識を下げている。飲み薬にはこのような副次的効果もあるのだ。
素人の暴論かもしれないが、政府は緊急承認制度の趣旨に立ち返り、塩野義のゾコーバを早期に承認する英断を下すべきではないだろうか。
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