短い栄光とその後の不遇… 一度も優勝できなかった大関・豊山(小林信也)

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 いまから61年前の出来事、それがスポーツライター小林信也の“覚醒の時”だったかもしれない。

 幼稚園から帰ると、テレビの大相撲中継がちょうど十両の勝敗を伝える時間だった。子どもなりに関心を持って見ていたのだろう。やがて、「内田」という力士がずっと勝ち続けていると知った。

(今日も勝った)

 自宅に戻って内田の勝利を確認することに、胸を躍らせるようになっていた。

(内田がまた勝った!)

 5歳の私は幼稚園から家まで約300メートルの道を駆け足で帰った。...

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