(AIG)一、全英女子オープン、渋野日向子、美しい敗北

スポーツ

  • ブックマーク

ブハイとのペアリングでなかったら……

 ブハイとのペアリングでなかったら、こんなミスパットは起こりえなかっただろう。前の組でプレーする田仁智(チョン・インジ)のように、マイペースで完璧なショットとパットを楽しんでいたはずだ。スコアも15~16アンダーは出せたろう。その点、渋野の不運は、3年前に勝ったブハイとラスト組でプレーすることだった。「完全に(プレーを)こなせなかった」ことが敗因だった。しかし、世界中のゴルファーを楽しませてくれた。

 1打差でプレーオフに加われなかった渋野は、田仁智とブハイのプレーオフを見届けている。ブハイが4ホール目のパーパットを沈めて優勝すると、今度は渋野がブハイに抱き寄って優勝を称え返した。美しい感動のシーンだった。

 9年前、私がホームステイして、早朝、息子のアレキサンダー君の車でコース入りしたエンジンバラのゴールドさんの家では、きっと渋野の美しい涙、美しい敗北の話題で花が咲いたことだろう。

早瀬利之(はやせとしゆき)
作家。ゴルフ評論家。1940(昭和15)年、長崎県生まれ。1963(昭和38)年、鹿児島大卒。著書に『石原莞爾 満州ふたたび』、『敗戦、されど生きよ』、『タイガー・モリと呼ばれた男』(以上、芙蓉書房出版)、『石原莞爾が見た二・二六』(光人社NF文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。