フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方、創価学会は今も熱心に活動中
続報は皆無
この現状がフランスでも報道されると、「日本は政教分離が遅れた異常国家だ」と呆れられるのではないか──。
そこで、フランスのメディアはどのように「統一教会と自民党の関係」を報じているのか、現地在住のジャーナリストで『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの─』(新潮選書)などの著作がある広岡裕児氏に取材を依頼した。
「端的に申し上げて、『統一教会と与党・自民党の密接な関係』といった日本の報道は、フランスのメディアではあまり紹介されていません。もちろん安倍元首相が射殺された事件は大きく取り上げられましたが、続報はかなり限定的なものにとどまりました」
なぜフランスのメディアは続報に消極的なのか、広岡氏によると理由は2つあるという。
「なによりも、日本という国そのものの存在感が低下しているからです。バブル崩壊後、経済の中心が中国に移ったこともあり、日本発のニュースに対してフランスの人々の関心が低下しているからです。あくまでも遠い国の国内的な問題ですし。2つ目には、元首相の射殺を正当化するように見られることを危惧しています」
統一教会と政治の問題は日本人が対処すべきであって、フランス人が口を出すべき事柄ではない──という考えもあるという。
「フランスの政治家やメディアは、他国の批判はしても、他国にこうしなさいとは言いません。内政干渉になるからです。ウクライナに対するロシアの姿勢と同じことになってしまいます」(同・広岡氏)
過去の遺物
更にフランスでは「統一教会がフランス国内で様々なトラブルを引き起こした」という事実は、既に忘れ去られてしまったという。
「80年代以来、セクト問題を追っていて、統一教会がヨーロッパ全土で問題視された時も現地で取材を行っていました。セクト対策法の成立も一部始終を目の当たりにしました。ところが今回の射殺事件で、フランスの新聞各紙は『そもそも統一教会とは……』という解説記事を掲載していたのです。いい意味で風化したのだと思います」(同・広岡氏)
なぜ統一教会はフランスで“過去の遺物”となったのか、これは反セクト法が世界でもトップクラスの厳しさを誇っていることも大きいという。
「法律の厳しさと世論の理解と支持から、統一教会がフランスからはほぼ一掃されたのです。今は国内で問題を起こしていない組織となると、どうしても人々の関心は低くなります。安倍元首相の死去を巡る報道で、フランスで続報があまり伝えられていないのは、統一教会を巡るトラブルを誰も覚えていないことも大きいでしょう」(同・広岡氏)
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