相手をバットで殴って意識不明に…乱闘で主役を食う大暴れを演じた男たち
あちこちで大立ち回り
8月6日のオリックス対日本ハムで、2打席連続死球に激高したオリックスの主砲、杉本裕太郎に対して、日本ハムの新庄剛志監督が「悪かったね」と謝罪し、乱闘劇を寸前回避した“神対応”が話題になった。乱闘は通常直接の当事者がクローズアップされるが、過去には新庄監督のケースとは逆に、主役を差し置いて直接関係のない選手やコーチが大暴れして退場処分になったり、問題になったケースがあった。【久保田龍雄/ライター】
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乱闘の最中に当事者がバットで殴られて意識不明になる事件が起きたのが、1968年7月21日の東京(現・ロッテ)対近鉄のダブルヘッダー第2試合である。
2点を追う近鉄は8回、阿南準郎、小川亨の連続本塁打で9対9の同点に追いついたあと、次打者・安井智規はセーフティバントを試みた。
ところが、極端にラインの内側を走り、一塁手の榎本喜八と交錯したため、榎本が二言、三言文句を言うと、安井も掴みかかり、殴り合いになった。
たちまち両軍ナインが飛び出し、大乱闘が勃発する。彼らは当事者の2人を制止するどころか、互いに喧嘩相手を求めるように、あちこちで殴る蹴るの大立ち回りが演じられた。
暴行容疑で書類送検
実は、7回にもテキサス安打直後の走塁をめぐる判定に怒った近鉄・三原脩監督が選手全員を引き揚げさせ、試合が33分中断する騒ぎがあったばかり。加えて、この日の東京の不快指数(蒸し暑さを示す指数)が「全員不快」に近い78を記録したことも、イライラに拍車をかけたようだ。
そして、騒ぎの混乱のなか、榎本が後方から何者かに首筋から右肩の辺りをバットで殴打され、意識不明になって担架で球場医務室に搬送された。
間もなく意識を取り戻した榎本は「後ろからバットで殴るとはひどい。もし、頭にでも当たっていたらと思うと、ぞっとする」と怒りをあらわにし、第1試合で史上最年少(当時)の通算2000安打を達成したうれしさも半減といったところだった。
真っ先に土井正博が近鉄ベンチを飛び出し、使われたのも土井のバットだったことから、当初は土井が犯人ではないかと疑われたが、その後、榎本を殴ったのは、控え外野手の荒川俊三と判明。8月9日、暴行容疑で南千住署に書類送検され、両球団は始末書と「暴力行為は今後一切起こさない」の誓約書を提出している。
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